第14章 いつの日か、皆

「今回は引き分けさ」
「……!じゃあ……!!」
「そう。私も方角師君も、命があるって事」
「そっかぁ。そっかぁ……!」
地獄に身を置く人間として、いけない事だとはわかっている。
しかしそれでも、友達の無事を喜ばずにはいられなかった。
そして、
「お前もな!命のあるにこした事はなか!」
ルシファーの肩をポンポン叩き、あははと満面の笑顔で笑いかけた。
「そうそう!ベルフェーゴルの野郎が魚釣りの相手しち欲しかったみたいやけん、今から湖に行ってやったらどげんね?
もう終わった事は気にすんな!」
「…なんだか、いいなぁ…。こういうの」
ルシファーが呟いた。
「失敗して来た私が言うのもなんだが……。
帰り着く場所があるって、いいよね」
チョルくんの温かい気持ちが、ルシファーは素直に嬉しかった。
例え失敗をしても、待っていてくれる仲間がいる事が。
帰る場所がある事が。
「…ああ。そうやな」
ここに来た理由は、自分の力の無さを痛感したからだった。
人間である自分がいては、足手まといになると。
例え囚われの身でもいい。自分の居場所が欲しかった。
だが、今は――。
「今は……、心から、お前らのそばにいたいち思っとうよ」
「本当かい?私もさ。
ありがとうね。テチョル君」
「なんね、今日は…。やけに素直じゃねーかし」
ルシファーの微笑があまりに温かく柔らかいので、チョルくんは頬を赤らめゴニョゴニョとする。
彼は、本当に心を闇に閉ざした"悪魔"なのだろうか。
「さーて、ベルフェーゴル君と魚釣りでもしてこようかな」
「確かベルゼバブもおったとよ。俺も暇だし冷やかしにでん行こっかな~」
「あはは、意地が悪いなあ。じゃあ一緒に行こうか?」
クスクスと笑いながら、ルシファーは部屋のドアを開けた。
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