第14章 いつの日か、皆

「はああぁっ!!」
ルシファーは、全ての力を乗せ鎌を振りかぶる。
刃はエディの頬と髪を掠め、空を切る。
しかしルシファーは、そのまま次の攻撃を繰り出した。
「くッ…!」
エディはそれを、自身の武器で受け止める。
そのあまりの重さに、武器を持つ両手が僅かに震える。
弾き返せばまた襲い来る猛攻に、エディは必死で防御に撤する。
これは、ルシファーの果てしない憎しみから成る力だろうか。
(私は…何も出来ないのか…?
目の前で息子が戦っているのに……。父である私が、守られているだけなのか?)
レミは、己が無力さを噛み締めた。
そして、
(私達に守られる立場であった、あの子が……)
息子の成長も。
「今のうちにお逃げ下さい!屋敷の中へ!!」
エディは、戦いながら両親に叫んだ。
「お早く!!お願いです、私達から離れ安全な所へ!!」
「…よそに気をとられていては、足下を掬われるよ?」
ハッと眼前に気が付けば、ルシファーが魔術を放つ寸前だった。
「サイスグランツ!!」
「!!!」
よける間合いすら与えず、近距離から闇色の槍が飛ばされる。
「「エディオニール!!」」
レミとジャンヌは、無意識のうちに息子の名前を叫んだ。
悪魔の槍がエディの胸を貫くかと思われた、刹那。
「――だからっ!言わんこっちゃないっ!!」
空の彼方からみほが飛び出し、エディにほぼ体当たりと言って良い形でしがみつき庇い、彼を槍から遠ざけたのだ。
「「!!!」」
「み‥ほ……」
そのまま勢いあまり、二人は地面に崩れてしまう。
槍は地面に突き刺さり、闇の魔力と帰し消えた。
(そんな…なんという速さ…!)
ルシファーは、思いがけぬみほの行動に戸惑いを感じざるを得ないでいる。
「ひとりで戦ってんじゃないわよ!!馬鹿!!
もっと自分を大事にしろっ!!」
涙をポロポロとこぼしながら、みほはエディの胸ぐらを掴んだ。
「…ごめん……」
エディは、か細い声で謝罪する。
本当は悲しませたくなかったのだろう、彼もまた眼に涙の膜が出来ていた。
「そこの悪魔も含めて……ほんとバカ男すぎっ!!」
立ち上がりざまに、みほはルシファーをキッと鋭く睨み付ける。
「二度と、こんな事をしたらただじゃおかないんだから!」
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