第13章 ただ、生きているだけで

「3代目で、まだ未熟な君は知らないだろうがね…。
悪魔は生きているだけで害悪。清らかさなど微塵もない、異形の化け物。
そう最初に言い出したのは、神ではなく、人間達!
価値観とは名ばかりの、勝手なイメージさ!」
ルシファーは、人が変わったように語気を荒げる。
「私達は、何一つ悪事など働いていなかった……。
温かな心で他者と触れ合い、楽しく生きていたさ。
それなのに、どうだい?
仲の良かった女神やエステレラは、そんな人間達の身勝手な創作話の為に、我々を戦争の末、光の一切届かない酷寒の世界に堕としめた。
――――あろう事か女神エイレンテューナは、恋人を、ヘルデウス様を追放したんだ!!
あのマナの神殿からね!!!」
「――――‥‥!!!」
エディは、耳を疑った。
あまりの衝撃に、声も出ない。
悪魔達は、そんな仕打ちを受けていただなんて。
知らなかった。
事実、自分も、幼い頃から悪魔を畏怖と嫌悪の目でしか見ていないではないか。
何も言えなかった。
エディも、レミもジャンヌも。
「人間達の偏見のせいで、我々は地獄へ堕とされた。
今度は、我々が絶望の地獄へ叩き堕とす番だ!
例え卑怯と罵られようがどんな手段を使ってでも、私は君の魂を消す…!3代目方角師!」
憎悪に目をぎらつかせ、ルシファーは叫んだ。
冷静なルシファーがこれ程までに豹変するのは、数千年の憎しみゆえか。
「…きっと、チョルくんも、知っているのだろうね。
貴方達サタンが抱いている、我々や人類への激しい憎悪を……。
ヘルデウスが受けた、私などには図り得ぬ心の傷を………」
エディは無意識のうちに呟く。
「ああそうさ、あの人質は全てを知っている。
だが彼は私達の味方だ。
君を殺しに行く事も、止めはせずむしろ激励してくれたよ?」
ルシファーは、わざとエディのショックを煽るような言い方をした。
本当は、チョルくんは必死に不安や悲しさを堪え見送ってくれたのに。
「…はは。あげなブサメン、早よう殺しちまってきんしゃい、なんてね」
「おや、悲しいのかい?」
「いや。私は彼を信じる!
初めて、我々マナの者と友達になってくれた人間が、私を蹴落とそうとするはずがない!!」
エディは、揺るぎない意思を持ちルシファーにそれを示した。
「私達マナ一族の最も強い武器は、友情なんです。
そんな、まやかしの言葉などでなくなりはしない」
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