第13章 ただ、生きているだけで

その頃聖域では、
「もぉ~~っ!!!!
バカッ!バカッ!!
エディ、バカッ!!!
1000年早いんだよ、バカッ!!
3代目のくせに、バカッ!!!」
『落ち着きなさい、エステレラ。
そのようにバカバカ言っては、茅になってしまいますよ』
同じ場所をソワソワうろうろし、珍しく苛々するエステレラと、それをやんわりたしなめるマナの女神が。
「だって、女神様!!
ルシファーは、四天王なんですよ!?強いんですよ!?
はっきり言って、3代目の子がひとりでかなう相手じゃない!!
ああもう、今すぐ加勢に行かなきゃ‥‥!」
『そのような事をしては、あの子にうらまれてしまいますよ?』
「変なプライドや意地なんか張ったって、死んだらなんの意味も残らないでしょう?!!」
『マナ一族は、若いですからねぇ…。見た目も、精神的にも。
あの子も、それ相応の行動をとったまでではないかしら?
…それに…。あの子とて、方角師。簡単には、死なないわ。
もう少しだけ、様子を見てみませんか?エステレラ…』
「…わかりましたよっ。
そのかわり、帰って来たらとっちめてやる!
当番だって、日にち多くしてやるんだから!!
もうエディなんか知らない!!あんなわがまま貴族!!箱入り野郎!!
誰もが振り向く美少年だからって永遠の17歳だからって調子こくなよ!!」
早口で暴言を吐き散らしながら、ふんっ!と、エステレラは勢いよくあぐらをかいた。
なんと天使にあるまじき行動。
しかし、そんな彼を見ても、マナの女神は微笑みを浮かべている。
(あんなに想われて‥‥。
本当にエディオニールは、お友達に恵まれていますこと)
「…何ニヤニヤしてるんですかぁ~?」
『まあ。ニヤニヤだなど、人聞き…神聞きの悪い‥‥。ウフフ』
「んもーっ、どいつもこいつも!」

「――貫け、闇を纏いし暗黒の槍“サイスグランツ”!」
ルシファーが唱えると、魔力で出来た巨大な漆黒の槍がレミとジャンヌに襲い来る。
受ければ、二人同時に刺し貫かれひとたまりもないだろう。
「あなた……!」
「……ッ…!!」
妻を庇うように、レミはその身体を抱き締める。
自分の内側に隠そうが、攻撃は免れられる可能性はない。
しかしそれでも、そうせずにはいられなかった。
「美しい愛だねえ…」
見届けながら、ルシファーは冷酷に呟く。
その目が語るは、“侮蔑”。
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