第13章 ただ、生きているだけで

「戦争中に魚釣りって、のんきかの‥‥?」
「そんな事ないよー。夕食のお魚さん釣るのが目的なんでしょ?
それに、いくら戦争中だからって釣りくらいはしていいはずだよ?」
「うん……。そうっすよね。
ありがとう、ベルベル。
行こう」
「うん♪じゃあね、アニーお姉様!」
「ええ、ごゆっくり」
ベルフェーゴルとベルゼバブが釣りに行くべくその場を去ると、竜太郎が何かを訴えるかのように鳴き出した。
「どうしたの、竜太郎?
その鳴き方…、何かを感じているのね?」
竜太郎は、大きくうなずく。
「……もしや、地上で何か起こってるのかしら……?
……………。
まぁいいわ。仕事だってあるし…。
仮に誰か私達の仲間が何かやらかしてるとしても、ヘルデウス様だって戦争中だし止めないはずだわ」
「…あの“契約”も、なくなったしな。
人間に手出しするのなんて、むしろ自由にしまくっちまえ、みたいな?」
入室と同時に、チョルくんはわざと明るい声音で言う。
「そういう方針なんやろ?
マジ鬼畜だしー」
チョルくんはニヤリと口端を吊り上げた。
「…あのねえ」
アスデモスは、やや呆れたような表情をチョルくんに向ける。
「あんただって人間でしょ?
もうちょいナーバスに受け止めるのが普通じゃなくって?」
「いちいちナーバスになっとったら、地獄じゃ暮らせんっちとうの昔に悟ったけんね。
それにしても、デカかね~。竜太郎は。
こげん強そーなんを、ホトの野郎はひとりで相手にしたと?マジやべーし」
山のように巨大な火竜を、チョルくんは目をぱちくりとさせ見上げた。
「俺なんか絶対ひと飲みだしー。
おやつ程度?」
「うーん、タマゴ●ーロ1粒くらいにはなるかしら?」
「タマ●ボーロて!
あげな、口ん中ですぐとけてなくなる小さか玉!
足しにもならんじゃねーかし!!
せめてたこやきとかにして欲しかよ!!」
「たこやき美味しいわよね~」
くだらない会話を繰り広げる二人の様子がおかしいのか、竜太郎が翼をバタバタとはためかせ喜ぶ。
「アイゴッ!?」
それによっておこる風圧に、チョルくんは足を踏ん張りなんとか堪える。
「はしゃぐな竜太郎!
俺んこつ吹ッ飛ばす気か⁉
ちゅーか、なしてお前はそげん平然としとーと!」
「鍛えてるからよ。
せっかく好かれたんだから光栄に思いなさいよね」
「……」
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