第13章 ただ、生きているだけで

「ところで、皆。シリアスな話をするわね。
あのあたし達をゴキ扱いしやがったムダデカチチ女は、なぜ突然取り乱したりしたのかしら」
(みほくん、超口悪い…シリアスになりきれないなぁ)
シアンが心の中でツッコむ。
「ボク、思い出した!
確か、ヒミコちゃんに“みるな!”とか言ってたよね?」
アダムが挙手しながら言った。
「意味が全然わからないよ!見るって、何を!?」
「本当に、わからないであるな……。
ただ、様子がおかしかった事だけは窺えるのである」
「見るではない。
“視る”じゃ……」
ヒミコは、ポツリと口を開く。
皆の視線が、一斉に彼女に集まった。
「あの女の、10年分の記憶……。
テチョルを残酷な目に遇わせた後悔、彼を想う悪魔らしからぬ感情」
「…ヒミコ…まさか…」
マオが呟いた。
「心が…、過去の記憶が、読めるのか?」
「…読みたくて読んでおるのではない」
ヒミコは強く思った。
もうおしまいだと、酷く寒気がする。
「すまぬ。皆の、わざわざ隠している想いも、喜びも悲しみも、何もかも……。
わらわは、ずっと覗き見ておったのじゃ。
‥‥今日を限りで、避けてくれても構わな‥‥」
「ヒミコかっけー!!
エスパーだったんだ!!」
「…!」
うつむいた顔を上げれば、笑顔のタオや皆がいた。
「グレイト!ボクにはできないよ!!」
アダムが元気良くほめた。
「ヒミコって、ほんまにすごい巫女やったんやねぇ。
さすがご先祖様や!」
エディは、感動したように目を輝かせている。
「ヒミコかっこいい!!私びっくりしちゃった!!」
チェンも同様だ。
「敵の心を読むなんて、なかなかできませぬよ。
私など、ただ見ていただけですのに」
マナが控えめに言った。
「わたくし、驚いちゃいましたわ」
イルカが言った。
「ヒミコさんすごいです…!マハラジャちゃんにも、後で教えてあげなきゃ」
コルちゃんも、仲間をほめた。
「我の予想、ビンゴだな」
マオは、少々自慢気だ。
「…皆…。嫌がらぬのか……?
わらわは…ずっと、皆の事を………」
あまりに温かな皆の反応に、ヒミコは面食らった。
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