第12章 終わりなき世界で…

「今の……。私が……?」
マナは震える唇から声をもらす。
「アスデモス嬢」
「アニー」
「アニーお姉様!」
「あら。皆」
すると、先程のルシファー、ベルフェーゴルとベルゼバブが音もなく姿を現す。
突然現れた三人に、ホトとマナは警戒を強める。
「フェル、ベルベル。他のやつらはどうしてた?
エステレラは一緒だった?」
「ううん。エステレラはいなかったよ」
「仕事してたっす。まあどうせ、そのうち自分を思い知るだろうけど……」
ベルフェーゴルは、チラとホトとマナを一瞥する。
「自分を……?」
ホトが呟く。
「おうちのほう、見てごらん」
ベルゼバブが抑揚のない声でホトとマナに話しかける。
二人は、言われるままに屋敷のほうを向き、刹那。頭が真っ白になる。
屋敷の人間達が、こちらを恐ろしく気味の悪い物を見ている目で見ているのだから。
(私が……。私が、先程…あんな事をしたから……?
私は…もう、人間では…?)
マナは、カタカタと震える二の腕を抱き締めた。
「あなた達は、もうおうちに住めないんだよ。
お勉強もお仕事も遊びもできないの。
……諦めて、受け入れて。あたい達だって、いろんな事いっぱい諦めたんだから」
ベルゼバブの目は、まるで感情がないかのようだった。
「……そんなの、知ったこっちゃない……」
ホトは、呟きながらマナの肩を抱き「行こうぜ」と促した。

誰も人のいない山中。
宛もなくたどり着いたそこで、ホトとマナは崩れ落ちた。
そして、静かに涙を流した。
「私は……。私は、何なの……?」
「…俺達は……。どうやら、この世界を見守る女神から不思議なチカラを授かり受けたらしい……。
そして………。あの悪魔達と、永久に戦い続けねばならないと……聞いた。
終わりなき、命の中で……」
「嫌……!なぜ、私達なの!?
私達だけ、苦しむのは嫌です!!
私達だけ、何もかも諦め捨て去らなければならないのは嫌よ!!!
ようやく掴みかけたのに、幸せになれないのは嫌!!!!」
マナは、涙も拭わずホトの胸に顔を埋める。
ホトも、静かに涙を流しながら彼女の体を強く抱き締めた。
「…ごめんね。マナさん。ホト君」
遠くのほうから、伝来ハカセが悲しい表情で歩み寄る。
マナとホトは、無言で彼のほうを向いた。
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