第12章 終わりなき世界で…

やがてマナも牛車で帰り、ホトは城下町を全力で駆け抜けゆく。
(急げ急げ、早く行って上様のお髪を結って差し上げねば!!
あ、その前におはようございますの挨拶だな!せんべいのお礼も言うんだお礼も!!
よーしっ、早く行くぞ~っ!)
「お侍様、お侍様」
後ろから子供の声がかかる。
ホトはいったん立ち止まり、振り向いた。
「何用だ?某は急いでおる、簡潔に申せ」
子供の容姿は、顔立ちは自分達と似ているが白衣に眼鏡、革靴と着ている物だけが珍しい。
纏う雰囲気の不思議な子供であったが、時間がない為ホトは特に意に介さず告げた。
「はーい、わかりました。
あのね、僕、伝来ハカセ。お侍様を探してこの区域まで来たんだ」
「ほう……。何故?」
「うーん…ちょっと説明しづらいなあ……。この区域、女神様の存在がまだ伝わってないもんなぁ…。
僕は、マナの女神というこの世界の守り神のお使いで…彼女の命で、君を探して来たんだ」
「めがみ……?」
聞き慣れない言葉に、ホトは首を傾げる。
「そう!女神!
君は、女神様に選ばれた者でね。良かったら、僕と一緒に女神様のもとに来てくれないかな?」
「某が仕えるは上様のみだ!神などという幻想的なものに従う気はない!
……御免」
強く言い放ち、ホトは再びお城に向かい駆け出した。
「……
(ムズカシイなあ、武士って)」
ハカセは、浅くため息をついた。

「…という事があったんですよ、上様」
「ほう。それは難儀であったな」
殿様の髪を結いながら、ホトは先程あった出来事を話す。
「あの子供は、可哀想にきっとどこか頭でも打ってしまったのでしょう。
全く、人が急いでいたというのに戯言を並べおって……」
「ははは!そう言ってやるでない!
案外、その童はマジメに話しておったやもしれぬぞ?」
殿様はニヤリと笑う。
「さようでござりましょうか……?」
むう、とホトは若干頬を膨らませた。
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