第12章 終わりなき世界で…

(そう。あの方は、身分に負けることなく、努力でお殿様の小姓にまでなった……。
私も、頑張らなくては‥‥)
あの方と、いつの日か一緒に幸せになる為に。

ある日の夜、マナがホトの屋敷に牛車で訪れた日の事。
二人は、興奮してか眠れず夜通しお喋りし盛り上がっていた。
「うふふ‥‥。ホトのおうちにお泊まりなんて、幼い時以来でわくわくしてしまいます」
「俺も今、すごく楽しいぞすごく!
朝になったら俺はそのまま奉公に、お前は帰路につけば大丈夫だ!」
「お仕事中、居眠りしないように気を付けてくださいね?」
「お殿様の前だぜ?そんな恥ずかしい事しでかしたら、自ら切腹してやるよ切腹」
言い、ホトはわははと笑った。
「まあお前も菓子くえ菓子」
ホトは、マナにおせんべいと金平糖を渡す。
「まあ、ありがとう…。美味しそうですこと。
このお菓子、どちらで買いましたの?」
「せんべいは上様が焼いたやつで、金平糖は家臣仲間がくれたんだ家臣仲間が。
上様、せんべい焼くのご趣味であらせられるんだよ」
どうやらホトは、城中の皆から可愛がられているようだ。
マナは、嬉しくも少し複雑さを感じた。
「ホトは城中のあいどるなんですね。
今に、ご家老様にもなれそう」
「ははっ。なれたとしても、あと何十年かかるんだろうな?
人間五十年なんだ、生きてるその短い間になってみたいもんだぜ。
ちなみに現在のご家老様は、祖父のような愉快でいいお方だぞ」
ホトは、おせんべいを一口かじる。
「おっ、うめえ。さすが上様」
「お醤油の味がしますねぇ…」
マナも、ひと欠片口にし微笑んだ。
「そういえば俺、最近自分の馬が病気したから毎朝走って奉公に出てるんだが……。
変だよなあ。全然疲れねえんだよ全然」
「私の家にいらした時も、走ってきたではありませんか」
「あのときは、喜びを抑えきれなかったんだよ喜びを!!」
そんな夫婦漫才のようなやり取りをしているうちに、朝日が登り窓から明るい陽が差してくる。
「やべえ、もうこんな時間か‥‥!
もう家を出ねえとお殿様が起きちまう!!
じゃあマナ、是非もねえがそろそろお開きだな」
朝飯も出せず申し訳ない、とホトはすまなそうな顔をした。
「別に朝ごはんなど良いのですよ。
とっても楽しゅうございましたもの」
対しマナは、微笑で返した。
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