第11章 悲壮なる開戦

「そ、そーなん…人は見かけによらなかね… 」
それは、チョルくんの本心だった。
今目の前でニコニコしてるベルゼバブは、ただのか弱い女の子にしか見えないというのに。
「てか騎士団におるなら、体力使いそうなもんやけどなし。
全然体型かわんねーしウケる」
「しょーがないよー!ご飯おいしーんだも~ん」
チョルくんの失礼な言葉に怒りもせず、ケラケラと笑ってあっけらかんと言うベルゼバブは懐が広いといえよう。
「本当にベルベルは、飾らなくていい子ねぇ。
見ていてすがすがしいわ」
「お前は見た目がんばっとう感じがするし。
そげん美しいとか普通ありえんから」
「あら。女だったら、キレイになりたいと思うのは当然じゃなくって?」
アスデモスは、綺麗な黒髪をさらりとかき上げた。
「でも、アニーお姉様はすっぴんでもキレイすぎるくらいなのになぁ」
「あら。ありがとうベルベル」
あなたも可愛いわよ、えーそうかなあアニーお姉様のほうが。
長々と続きそうな女同士の誉めあいに終止符を打つべく、チョルくんがひとつ咳払いをする。
「はいはい、どっちも美女だし!
ところで思ったんやけど、さっきお前らん仕事はハエ騎士団だ言ってたじゃん?
そういや、ルシファーとベルフェーゴルはなんばしとーとかなっち…」
「ああ、あいつらか…。
ファルは大判官、フェルは発明家ってとこかしらね」
アスデモスが軽く説明する。
「なんね?それ」
「うん、ファルのはよーするに司法官さんだよ。
フェルは、人見知りくんだから裏であたい達ハエ騎士団の武器を作ったり考えたりしてくれてるの」
ベルゼバブがさらに説明した。
「あいつ、対人スキルは低いけど頭いいのよね。
機械なんかも強いみたいだし」
「ああ……。知らん悪魔が来ると、俺とかお前らとかルシファーとかヘルデウスとかの後ろに隠れるしな。
ばってん、なんでやろう……。あいつなら許せるんよ。
普通なら、こげんなよなよした男ありえーん!っち、なるんやけど…」
「ほら。フェルって、おっとりしてて憎めないから…。
ポーカーフェイスで人嫌いだけど、繊細なのよね」
「フェルいい子だよ?
めんどくさがりだけど、とっても優しいもん」
「まあなぁー‥。
変な奴やけど、悪い奴じゃなかとよな。
ルシファーの野郎も、変な奴やけど基本的には紳士やし…なして悪魔男子って変わった奴ばっかなん?」
「いやいや、あの二人が濃すぎるだけよ」
アスデモスは誤解を与えてはならないと思い否定した。
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