第11章 悲壮なる開戦

「なぁ。悪魔が地上を襲う可能性もあるって、ほんまかな…。
地上には、わいやイルカやコルちゃんの家族かておるんに…」
「もし来たって、心配ないわ。
奴らが地上に立ち入る前に、やっつければいいの」
みほは、ニッと勝ち気な笑みを浮かべる。
「…うんっ、せやな!おおきに、みほ。
この事実を、地上のお父様やお母様は知らへんのや…。必ず、地上に入るんを防がな」
「…ねぇ。前から思ってたんだけどさ。
あんたって、どこの生まれなの?一般人は、親を様付けで呼ばないもの」
「ああ…えっと…」
エディは、どこか躊躇う素振りを見せる。
(……。みほになら、話してもええかな…)
「…驚かへん?」
「うん」
「みほ。わいは…」
エディは真剣な表情で切り出す。
「何?」
「わいは…いえ…。
――私は、貴族だったんです。
覚醒前まで、家督相続の為の勉強や社交界に出る日々を送っていました。
自らの意思などなかった。
親の言うことを聞いて、ただ家の為に生きていればいいと勘違いしていたんです。
それでも、マナの力を授かってからはハカセに誘われ家を出る決意をしました。
そこで初めて、自分の意思を持ったのだから呆れる…。
結果、勘当されましたが仕方ありません。唯一の跡取り息子が人外になってしまったのですから。
今でも、彼らには申し訳なく思っています。
関西弁は、身分を隠し過去を忘れる為の演技です。
…私は……私は、今、ここに存在している事が嬉しくも、奇跡的に思う。
今まで隠していて申し訳ない…」
胸に手を当て、エディはみほにスッと頭を下げた。
みほは、突然の告白と変貌ぶりに驚くを通り越し硬直してしまう。
「(だっ、誰?この、目の前で壮絶な半生を語っている紳士は……!
本当にエディなの?!)
…あっ、あの~…。すみません。
このへんにいたはずのエディという金髪碧眼の人を探しているのですが、お見かけしませんでしたでしょうか…?
無駄にイケメンなのが特徴です」
「その方でしたら、今朝、鏡の前でお見かけしましたよ。
確かに、言われてみれば無駄にイケメンでしたよね~。
こんなポニーテールをしている方でしょう?」
エディは、ニッコリと自分を指して笑いかける。
やっぱですよねー、とみほもつられて笑う。
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