第11章 悲壮なる開戦

「現実逃避みたいだけど、たまにこう考えちまうんだ……。
マナの者としてでなく、別のっつーか…ただの人間としての平凡な人生があったらって…」
「わたしは、わたしで良いんです。
そうでなければ、かけがえのない皆と出逢う事ができませんでした」
先程までの張りつめた表情が嘘のように、コルちゃんは柔らかく微笑む。
彼女の言葉と纏う雰囲気に救われたのか、タオもニッと笑った。
「おう!オレもオレで良かった!」
そして、そんな二人を陰から見つめる者がいた。
嫉妬の炎に燃えるチェンだ。
(な、なにあの二人!なんか、いい雰囲気っぽいんだけど……?!
お願いタオっ!私という者があるっつーこと忘れないでぇ~っ!!
浮気は男の甲斐性なんて、“タバコって実は体にいいんだぜ”くらい信じちゃダメな話だからね!?だからねっ!!?)
猛烈な勘違いをしている事に彼女が気づくまで、あと5分。

「あたし達の幸せな時代は、終わったのね…。エディ」
みほは、浮かない顔でポツリと漏らした。
「…確かに、もう今まで通りには暮らせへんな。
お互い、これまでとは違う生活になるわ」
「…………」
「…………」
しばらく沈黙が流れ、先に吹き出したのはみほだった。
「…ぷっ、あははははっ!」
「な、なんなん~?」
「ごめんごめん、だって今の会話の流れだと変な方向に聞こえて~~!きゃははははははっ」
「あはははっ、ほんまやぁ!言われてみれば!
わいら破局間際のカップルかいな!
戦争中の話しとったんに~!!」
「あはははははっ!!」
「はははははは!!」
しばらく大笑いし、ひとしきり笑うと二人は自然な表情で顔を見合せた。
「あーあ、暗い気分もふっ飛んじゃったわ。
あんたって不思議ね~。お笑い芸人?」
「もう、何言っとんのー。
でも、わいも前から思ってたんよ。みほといてると、不思議なくらい楽しいなって」
エディは、透き通るスカイブルーの目を細めて微笑む。
すると、みほの頬に赤みが差した。
「な、何言ってんのよこんな時に!!バ関西人!!
そりゃあ、あたしだって前から、…お、思って…たけど……」
気恥ずかしさから、みほはゴニョゴニョと吃る。
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