第11章 悲壮なる開戦
(…そん、な……)
地上の安全を考える事は、もちろん大切。
しかし、恩人であるマナの者に刃を向ける事などできるはずもなく。
かと言って、家族のように育ててくれた悪魔達の事も裏切りたくはない。
チョルくんの心は、ぐるぐると混乱していた。
「そんなの、決められん‥‥。
どっちも、裏切りとうなかよ……っ!」
「…わかった。では、君はどちらとも戦わなくて良い。
自分はどうしたいのか、世界はどうなるのか、最後まで見極めるがいい。
ただし、条件がある」
「……」
「地上の安全は、諦める事だ」
「…それ。だと……。
俺、解放された事になるんじゃ‥?」
「なんとも言えんな。
この地獄にいてもいいし、天上界に行ってもいい。
お前の自由だ。
全て、自分の責任で動けば良い」
「‥‥俺。意味あったんかなぁ‥」
「意味がなければ、子どもを義家族から引き離してまで人質になどとったりしなかった」
その時のヘルデウスの顔が、穏やかながらも切なそうに見えて、チョルくんは思わず言葉を失った。
「心の命ずるままに行動し、今度こそ本当の意味での居場所を見つけてくれ。
私達サタンが闘うのも、居場所を見つけたいから…ただそれだけにすぎないのだから」
「…居場所…」
「ああ。
そもそも、私達が女神達と敵対し、人間の住む地上を支配せんとする理由は、そこにあったのだ。
…太古の昔。我々とマナの女神やエステレラも、もともとはひとつだったのだ。
世界も、天上界と地獄の2つのみでな」
「知っとる……。ベルゼバブが、言っとった」
「そうか…。
それから地上ができ、お前達人間が誕生し‥‥。
その人間達の間で、“悪魔は害悪な存在”という観念が生まれ…我々は天上界からこの地獄に追いやられた。
エイレンテューナとしては、女神である以上人間を守るしかなかったのだろう」
「なんも、悪いことしてないのに……?」
「年若い君は知らないだろう。
あの神殿は、もともとは私達サタンが住んでいた場所であったのだよ」
「!!」
愕然とした。
かつて、自分達が暮らしていたあの美しい場所から、この暗い世界に追いやられた悪魔達は、どれほどみじめな気持ちになっただろう…。
そして、そうさせたのが自分の祖先だっただなんて。
女神とヘルデウスを引き離したのも、傷付けたのも、自分達…人間。
地上の安全を考える事は、もちろん大切。
しかし、恩人であるマナの者に刃を向ける事などできるはずもなく。
かと言って、家族のように育ててくれた悪魔達の事も裏切りたくはない。
チョルくんの心は、ぐるぐると混乱していた。
「そんなの、決められん‥‥。
どっちも、裏切りとうなかよ……っ!」
「…わかった。では、君はどちらとも戦わなくて良い。
自分はどうしたいのか、世界はどうなるのか、最後まで見極めるがいい。
ただし、条件がある」
「……」
「地上の安全は、諦める事だ」
「…それ。だと……。
俺、解放された事になるんじゃ‥?」
「なんとも言えんな。
この地獄にいてもいいし、天上界に行ってもいい。
お前の自由だ。
全て、自分の責任で動けば良い」
「‥‥俺。意味あったんかなぁ‥」
「意味がなければ、子どもを義家族から引き離してまで人質になどとったりしなかった」
その時のヘルデウスの顔が、穏やかながらも切なそうに見えて、チョルくんは思わず言葉を失った。
「心の命ずるままに行動し、今度こそ本当の意味での居場所を見つけてくれ。
私達サタンが闘うのも、居場所を見つけたいから…ただそれだけにすぎないのだから」
「…居場所…」
「ああ。
そもそも、私達が女神達と敵対し、人間の住む地上を支配せんとする理由は、そこにあったのだ。
…太古の昔。我々とマナの女神やエステレラも、もともとはひとつだったのだ。
世界も、天上界と地獄の2つのみでな」
「知っとる……。ベルゼバブが、言っとった」
「そうか…。
それから地上ができ、お前達人間が誕生し‥‥。
その人間達の間で、“悪魔は害悪な存在”という観念が生まれ…我々は天上界からこの地獄に追いやられた。
エイレンテューナとしては、女神である以上人間を守るしかなかったのだろう」
「なんも、悪いことしてないのに……?」
「年若い君は知らないだろう。
あの神殿は、もともとは私達サタンが住んでいた場所であったのだよ」
「!!」
愕然とした。
かつて、自分達が暮らしていたあの美しい場所から、この暗い世界に追いやられた悪魔達は、どれほどみじめな気持ちになっただろう…。
そして、そうさせたのが自分の祖先だっただなんて。
女神とヘルデウスを引き離したのも、傷付けたのも、自分達…人間。