『子どもは、純粋です。
大人のように、理屈にとらわれる事なく考えを見いだし行動できます』
「子どもが純粋？そんなの、大人達の幻想にすぎません。
皆、何かを抱えて生きているし、知られたくない過去や想いだってあるの、女神様もご存知でしょう？」
『無邪気なだけが、純粋さではないわ。
純粋さの中には、悲壮や愛憎だって含まれています。
純粋だからこそ、愛を欲したり、恨んだりするもの。
何もかも諦めた者は、そんな事は一切思いません。
純粋とは、心が生きたいと願っている証。
…あの精霊達が、そうであるように』
「………」
『でもね、エステレラ。
こうも考えられませんか？
出身も過去も考えも性格も違う大人達が突然同じ所に住み、同じ生活を送り、世界の為に闘えなんて言われたら、どうなると思います？』
「‥反発しあう‥‥。他人ばっかりで、気まずくなったりする」
『そう。大人は“他人”という境界線を作ります。
特に、外国人ばかりで価値観が違うとなれば、一気にやりにくさを感じるもの。
しかし、子どもの場合は違う。いったん心が通じあえば、“他人”はかけがえのない“友達”に変わります』
「‥そっか‥‥。だから、皆あんなに生き生きと賑やかに生活しているんだ……。
あんなに、仲良く…」
『良い意味でなんでもアリ、ですから。子どもの世界はね』
マナの女神は柔らかに微笑み、白く美しい手でエステレラのふわふわの髪を撫でた。
『貴方があの子を想うのも当然のお話です。
私も、少しでも今の状況が良くなるように策を練りますから……これからもサポート、よろしくお願いしますね？』
「はい！」
エステレラは嬉しそうに返事をした。
「じゃあ女神様、僕、神殿にいって参ります！
新しい当番表作ったんです」
『そういえば、１週間ごとに変わるんでしたわね。
それではお気をつけて』
「はい、女神様！」
エステレラが去るのを見届けると、マナの女神は目を閉じ地獄にテレパシーを送り始めた。
『‥‥今、私達の事を視ていたでしょう？一体何用？
……ヘルデウス』
テレパシーが通じ、ヘルデウスの声が脳に響く。
―――“さすがだな‥‥。見破られていたか。
別に、大した用ではない。
人質の息災を伝えようとしたまでだ”