「…ボクも……」
声が震え、こらえきれない涙が頬を滑り落ちる。
「ボクも、イリスェント信じてるっ‥‥。
イリスェントっ、大好き」
「‥Thank you…Adam.」
やがて陽が昇り、朝陽が二人を照らし出す。
彼らの顔は涙に濡れていたが、晴れた空のように澄みきった笑顔だった。

時を同じくして、聖域。
エステレラは朝陽に包まれながら、ある事を考えていた。
その姿は宝石のような瞳や髪が美しく光を反射し、“天使”の名に相応しい。
「…女神様…」
『何でしょう』
「この状態は……、いつまで続くと思われます？」
大きな碧の瞳が、自分を不安そうに見つめる。
マナの女神は、少し眼を伏せ考え始めた。
『…そうですね……。
あの子が人質でいられる期間にも、限りがあります。
人間の寿命は、あまりにも短い』
「……そうしたらまた、悪魔との戦争が起きる？
チョルくんは、ほんの短い時間、僕らや悪魔に利用されるにすぎないだけ？」
『エステレラ、少々落ち着いて…』
「そんなのあんまりです!!
束の間の平和の為だけに、短い人生を支配されなければならないだなんて!!」
『エステレラ!!!』
マナの女神が、声を張り上げる。
真摯な眼差しで見つめられ、エステレラは我に返った。
「‥す、すみません……。
出過ぎました…」
『いいえ。そうではないのよ。貴方を怒ってはいないわ。
ただ、私達は統べる者。如何なる時も冷静な判断が出来ないと、いざという時に誤りが生じてしまいます』
「それは、わかっています‥‥わかってはいますけれど、どうしても感情が先立ってしまうんです…。
友達を利用するだけして死なせるなんて、このまま別れるなんて嫌だ……」
どうしてずっと一緒にいられないの？
エステレラの顔は、まるでそう叫んでいるかのようだった。
「ダメだ……。こんな考えだから、悪魔達に甘えてると言われるんだ…。
――女神様‥‥。女神様は何故、仕える者に僕達“子ども”を選ばれたんですか？
こんな余計な感情に邪魔されて、仕事に支障をきたすような存在を……」
エステレラは、すがるようにマナの女神を見つめた。