第10章 統べる者の想い、仕える者の葛藤
「我が輩は…。覚醒するまで、戦争で人を殺して生きてきた。
ひとりで生きる為、傭兵をしていたのである。
頼りはいなかった。
生きるには他に道もあったのであろうが……、あの頃の我が輩が知っていた事は、“戦う事”だけであった。
幼かったのである‥‥。身も、心も……。
たくさんの命を自分の為だけに踏み台にした我が輩を…、軽蔑するか?」
イリスェントの顔には、表情は無かった。
「…ううん。だって、イリスェントは優しいもん。
いつも、いつかキミの隣に立ちたいって強く願っていたんだ。
傭兵だったのは…、理由があったからでしょ?
イリスェントは、何も考えず戦い殺す人じゃない。ボク、わかるもん」
アダムは、儚く微笑んだ。
「気になってたんだ。射撃を訓練してもらう時、いつもキミの言う言葉が‥‥。
“いざという時、自分を守れるのは自分だけ。
真の危機にさらされた時は、皆自分の事で手一杯。
誰も助けてはくれない”
って……。
そっか。キミじゃなきゃ言えない言葉だよね」
そう。
たったひとりで戦ってきた戦士でなければ、言えない言葉。
「…。戦場では、そうだったのである。
今までも、頑なにそう信じて‥。真の味方などありはしないと。
しかし、今ならこうとも言えるのである。
ここには、信じるに価する仲間がいると…。
ここなら、信じて良いとも…な」
イリスェントは、ギュッとアダムを抱き締めた。
精一杯の“信頼”をこめて。
「信じている。アダム。ただ信じてる。
共に戦おう」
「‥‥ッ…」
アダムはぐっと唇を噛みしめ涙をこらえながら、抱き締め返した。
イリスェントの体から伝わる温もりに、血の通った“生きている証拠”を感じる。
ひとりで生きる為、傭兵をしていたのである。
頼りはいなかった。
生きるには他に道もあったのであろうが……、あの頃の我が輩が知っていた事は、“戦う事”だけであった。
幼かったのである‥‥。身も、心も……。
たくさんの命を自分の為だけに踏み台にした我が輩を…、軽蔑するか?」
イリスェントの顔には、表情は無かった。
「…ううん。だって、イリスェントは優しいもん。
いつも、いつかキミの隣に立ちたいって強く願っていたんだ。
傭兵だったのは…、理由があったからでしょ?
イリスェントは、何も考えず戦い殺す人じゃない。ボク、わかるもん」
アダムは、儚く微笑んだ。
「気になってたんだ。射撃を訓練してもらう時、いつもキミの言う言葉が‥‥。
“いざという時、自分を守れるのは自分だけ。
真の危機にさらされた時は、皆自分の事で手一杯。
誰も助けてはくれない”
って……。
そっか。キミじゃなきゃ言えない言葉だよね」
そう。
たったひとりで戦ってきた戦士でなければ、言えない言葉。
「…。戦場では、そうだったのである。
今までも、頑なにそう信じて‥。真の味方などありはしないと。
しかし、今ならこうとも言えるのである。
ここには、信じるに価する仲間がいると…。
ここなら、信じて良いとも…な」
イリスェントは、ギュッとアダムを抱き締めた。
精一杯の“信頼”をこめて。
「信じている。アダム。ただ信じてる。
共に戦おう」
「‥‥ッ…」
アダムはぐっと唇を噛みしめ涙をこらえながら、抱き締め返した。
イリスェントの体から伝わる温もりに、血の通った“生きている証拠”を感じる。