第10章 統べる者の想い、仕える者の葛藤

「私達は、マナの者とは違うよ」
「!!?」
ルシファーに突然無表情に言葉を投げ掛けられ、チョルくんは驚き目を見開いた。
「私達は、彼らのような甘い者とは違う」
「おっ、俺、まだなんも言うとらんし!なんなん…っ?!」
「ごめんね、チョルくん。
あたい達サタンはね、他人の心が読めるんだよ。
楽しかった記憶も、悲しかった記憶もね」
(‥‥‥‥)
いつもの陽気な雰囲気の消えたベルゼバブに、チョルくんは感じ取った。
悪魔達は、この能力を得たくて得たわけではないのだと。
その為チョルくんは、自身も視られている事実に動揺しているが口に出さず耐えた。
「…あんた、優しいのね。
人間なんて自己チューなヤツばっかだと思ってたけど、あんたは違うと思っといてあげるわ。
普通の人間は、悪魔を気遣ったりしない」
「……………」
「おいら達は、おめえをムリヤリ拐ったのに‥‥。情でも移ったんすか?
ほんと人間って、複雑でめんどくさい生き物っす」
「…ッ、違うっ!
俺の絶対は、ヌナだし!!お前らは……!!」
「はいはい、わかってるから。
もういいよ、言わなくて」
ルシファーは、チョルくんの頭をぽんぽんと叩いた。
「‥ありがとう。私達を気遣ってくれて。
私達も、君の事は大切に思ってる。
でもね。これは変える事の出来ない事実。
君の絶対の人は、私達の絶対の敵なのだよ」
「‥‥。全ての種族が、仲良うはしきらんと?」
「かつては、そうだったっす。
でも、大昔の話。
マナの者は、サタンの敵。
人間は、支配すべき存在。
これが今っす」
「昔は、ヘルデウス様とマナの女神も仲良しだったんだよ。
でも、人間のせいで仲違いしちゃった」
ルシファーが語る現実。
ベルフェーゴルとベルゼバブが語る過去。
チョルくんはやるせない気持ちにかられた。
「人間…の……?」
「もっと掘り下げて言えば、人間の持つ価値観のせいかしら。
神や精霊は正義。悪魔は悪、みたいなね。
――コレで満足?さあ、もう行っちゃいなさい。
今日の洗濯当番あなたよ」
アスデモスが最後に言った。
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