第10章 統べる者の想い、仕える者の葛藤

「へぇー!じゃあ、チョルくんは?」
「ああ。あの子はね、教えたジャパニーズを自ら趣味で方言化しましたのよ。」
「「「「「「趣味!!!?ι」」」」」」
「頭がよろしいのよ。あの子」
総ツッコミをシカトし笑顔で姉バカ発揮するイルカに、一同は何も言わなかった。

「へっくち!!!!」
「可愛いけど音量半端ないくしゃみね」
「あはは、チョルくんイケメンだから誰かに噂されてるんじゃない?」
彼の姉のせいか、地獄でチョルくんは大きなくしゃみをしていた。
その場に居合わせていたアスデモスはメイクをしながら、ベルゼバブはチーズを食べながら、思い思いに感想を述べる。
「お前らに言われんでも、俺はイケメンだしー。
ばってん、どうせ噂されるんやったら姫様がいいなあ」
「まーた始まったっす。チョルの姫様もしくはヌナ病」
「しぇからしか!!黙らんねベルフェーゴルの野郎!!
――って、人が話しとる最中にあくびしんしゃんなむかつくー!!」
「うっさいわよチョルくん。いちいち本気にしてたらきりないからやめなさい。
…よし!できたっ!」
「さすがアニーお姉様!お化粧カンペキだねっ!」
「当然よ。ノーメイクじゃおもてを出歩けないからね」
アスデモスは、フフッと若干得意気に微笑んだ。
「美しいよ。アスデモス嬢」
「ありがと、ファル♪
ねぇ、ベルベルもたまにはおしゃれしたらどうかしら?
私がメイクしてあげるから」
「え~似合わないよ恥ずかしいよ~」
「え~絶対似合うからしましょうよ~」
「…おめが化粧なのしたところで、すんぐ飯(まま)食って崩れっちゃや…。
ほんとえ有り得ねで…
(お前が化粧なんかしたところで、すぐご飯食べて崩れるじゃん…本当ありえないよ)」
女性陣がキャッキャするなか、対照的にベルフェーゴルはボソッと呟いた。
「…なに言ったかほとんどわかんないけど、あたい否定されたのかな?」
「気にしないでおきたまえ、ベルゼバブ嬢」
「フェル……訛るなとは言わないわ。通訳を雇ってくれればね」
「はがいのぉ~…。
んださげ、めんどくせぐなんなさやぁ…
(イラつくなあ…だから、めんどくさくなるのにさ)」
「「「は?羽交い締め?」」」
「……。もういいっす…」
わかってもらえず、ベルフェーゴルはあきらめてため息をついた。
(…………)
ガヤガヤとする四天王を眺めながら、チョルくんはひそかに首を傾げた。
(なんねあいつら‥‥“愛や友情にすがるのは甘さ”とか言っておいて、あいつらにもちゃんと友情あるんじゃなかね?
こいつら、マナの者と何が違うとやろ?)
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