第13章 ウェッジの怒り

やがてルーラのいない場所まで行くと、ウェッジは三人に背を向けたままピタリと止まった。

彼の頭を、ローラは労るように優しく撫でる。

するとウェッジの目からポロポロと涙がこぼれ落ちた。

よほど悔しかったのだろう。

「よしよし…。今日、あの人を憎む理由がひとつ増えたよ。君を傷付けるなんて許せないにも程がある」

ローラも相当怒っているようだ。

「僕もあいつは好かないが、あそこまでクズな発言ができるとはな」

ククロはルーラに静かに激怒している。

「ウェッジさん、元気出してくださいです……」

ルカはウェッジを心配そうな目で見詰めている。

「…皆、ありがと。」

ウェッジは手で涙を拭った。

「それにしても、どうしてオレが盗賊だって知ってたんだろう。教えたことないのに……」

「そのバンダナのマーク。盗賊団の団員のマークだろう。おそらくそれを見て盗賊だと判断したんだろうな」

ククロに言われ、ウェッジは被っているバンダナのマークを触った。

「あー…。これかぁ」

「もうあんな人の事なんて気にする必要ないよ。考えるだけムダさ。それより、これからアルテマの眠る神殿に向かわないかい?ウェッ君、助けてくれるね?」

ローラは優しく微笑んだ。

ウェッジも救われたように笑顔になった。

「もっちろん!!」



一方、時を同じくして。

アルテア城の暗い一室にて、水晶玉を前に佇む者がいた。

彼の見ている水晶玉には、ローラ達四人の姿が映っている。

「ついに、光の戦士が究極魔法の封じられた神殿に向かおうとしているか…ミシディア族とプレシャス族を滅ぼしたのに、生き残りがいたなんてね。アルテマの復活は阻止できなかったか」

男は、水晶玉を見つめたまま、彼の後ろに控えている人物に話す。

「だが、今からでも遅くはない。ムシュフシュ、神殿に先回りして光の戦士を消すんだ。僕らの計画の為にね……」

ムシュフシュと呼ばれた男は、うやうやしく頭を下げ頷いた。

「はっ。必ずやアルテア王国軍11将の名にかけて、光の戦士を抹殺してご覧にいれます…」

ムシュフシュが暗い部屋から立ち去るのを、男は足音で察知した。

光の戦士達を待ち受ける波乱の運命が今幕を開けようとしていた。
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