第12章 切なる思い

ギードは家族の肖像画の飾られた部屋へと駆け入ると、その肖像画を壁から外し、額縁から絵を取り出した。

そして、自分とローラの描いてある部分だけを綺麗に切り取ると、両親の描いてある部分は暖炉の火の中に捨てた。

その切り抜きだけを手に、ギードは家出した。

近所のチョコボ農家からチョコボを1羽買い取り、そのチョコボに乗り一心不乱に走らせた。

どこでもいい、どこか遠くへ。

あの穢らわしい両親のいない所へ。

このアルテアじゃないどこかへ。

朝も昼も夜も、ギードはチョコボを走らせた。

こうして2日が経ち、気がついたらギードはとある町へとたどり着いていた。

完全に知らない町だ。

チョコボを町の外へ解放し、ギードはふらりと町の中を歩いた。

ふと教会の屋根の十字架が目に入り、ギードは決意した。

(教会に入ろう……そしてローラ兄様の無事と、いつかまた会えるように毎日神様にお祈りしよう。)

教会のドアを小さな痩せた両手で開けると、金髪をポニーテールに結った優しい面立ちの眼鏡をかけた神父と思わしき男性が出迎えた。

「こんにちは。お祈りに来たんですか?偉いですね。」

「はい。毎日、お祈りさせてください…。僕をこの教会へ入れてください。」

泣きはらした目をした痩せた5歳にも満たない少年がこんな事を言うのは、きっと何かあったに違いない。

神父はわけを聞いてみる事にした。

「どうしたんです?詳しくお話を聞かせてもらえますか?」

ギードは、全てのわけを話した。

神父はずっと真剣な目で聞いていた。

「そうなんですか…。わかりました。今日からこの教会でいっしょに住みましょう。私はエクセンといいます。あなたは?」

「ありがとうございます…。僕は、ギード・ラージア・ディーンです。」

「よろしくお願いします、ギード君。さあ、ご飯にしましょう?おなかすいてるでしょう?」

「はい……。」

こうしてギードは、聖職者を目指す身となった。


エクセン神父は優しい人だった。

教会内で大好きなカメを飼うのを許し、自ら池を作り増やしてくれた。

ルーラと同じ色なのが嫌で染髪したのにも目を瞑ってくれた。

ギードはすぐにエクセン神父が大好きになった。

エクセン神父もまた、ギードを我が子のように可愛がってくれた。

エクセン神父のおかげで、ギードは幸せな毎日を送っていた。
4/5ページ
スキ