第12章 切なる思い

両親がローラを忘れた事に気付いたのは、家に帰ってしばらくしてからだった。

両親は、ローラを探しに行くどころか互いに責任をなすりつけあい喧嘩するばかり。

ギードは、そんな両親が怖くて、憎くて、そして何より兄を失った寂しさ、恋しさから泣いてばかりいた。

数日もディーン家はそんな事態が続いた。

なぜローラはいなくなったんだろうか?

なぜ両親は喧嘩してばかりでローラを探しに行かないのだろう?

なぜローラを森へ置き去りにして帰ったんだろう?

ローラが何をしたと言うんだろうか?

幼いギードには何もわからない。

「ギード君…もう泣かないでくれよ。泣いてたってローラ君が帰ってくるわけじゃないんだ。」

寂しくて寂しくてずっと泣いているギードに、ルーラはこんな言葉を投げかけて来た。

この父親はローラを森に忘れたくせに、なぜ自分が泣くのを責められないといけないのか?

ギードは胸に怒りが沸いてきた。

「じゃあ、なぜ父様はローラ兄様を探しに行かないの?ローラ兄様もどこかで泣いてるかも知れないよ。」

ギードは涙に濡れた目でルーラを睨み付けた。

「探したって、もう見付からないよ……。」

ルーラの目は、悲しみと諦めが入り交じっている。

そんなルーラの態度に、さらにギードは怒りが沸いた。

「どうして最初から決め付けるの?!もういい!!しょせん父様のローラ兄様への気持ちなんてそんなものだったんだ!!!」

泣き叫びギードはどこかへと駆け出し、部屋を出ていった。

そんなギードを、ルーラは追いかけもしなかった。
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