第12章 切なる思い

「なあなあ、小さい頃の二人ってどんなだったんだ?」

ウェッジが興味津々にローラとギード神父に尋ねた。

「ローラ兄様は、今とあまり変わらない感じでしたよ。とても優しくて面倒見がいい子でした。どこかに行く時は必ず私の手を引いて少し前を歩いてくれるような、そんな兄様でした。」

「あはは。懐かしいな…。ギードは、そうだね。とてもおとなしくておっとりした子だったな。こう言っては悪いかもしれないけれど、か弱かった気がする。」

「ええっ?!ギード神父がか弱かった?!!」

ローラの言葉に、ウェッジはあからさまに驚いた。

「意外だな……。」

ククロも驚いているようだ。

「19年間のうちに、だいぶ性格が変わられたんですね~。」

ルカがおっとりと言った。

「ははは。そうですね、あの頃よりはやさぐれたかも知れないと、自分でも思います…。ローラ兄様、小さい頃言ってくれましたよね?自分はお兄ちゃんだから、私を守ってくれるって。」

「今でもその意識はあるよ。兄として君を守らなきゃって思ってる。」

ローラは柔らかく微笑んだ。

「そして、君が19年間、どういうふうに過ごして来たかも知りたいんだ。私は君の兄だからね、弟の事をちゃんと知りたいんだ。」

ギード神父は、ローラの気持ちが素直に嬉しかった。

けれど、心に曇りが出来てしまう。

「ローラ兄様が聞いたら、きっとおもしろくない思いをすると思います。」

「両親には、とっくに愛想を尽かしているさ。どんな話でもかまわない。話してくれるかい?」

ローラの顔は優しいままだ。

ギード神父は、そんなローラに背中を押され頷いた。

「わかりました。全て、お話しします……」





アルテア王国の貴族であるディーン家。

そこでは、とても仲睦まじい双子の兄弟が住んでいた。

名前は、兄をローラ、弟をギードといった。

二人は、よくどちらがどちらかを間違われるほどにそっくりだった。

二人はよくいっしょに遊んでいた。

寂しがり屋のギードは、よくローラの後を追いかけていた。

そんなギードの手を、ローラはいつも繋いで歩いた。

誰が見ても、幸せな双子だった。

4歳のあの日が来るまでは。


家族でミシディア族の村の近くの森にピクニックに行った時の事だった。

どこかへ小用を足しに行ったローラの事を忘れたのか、ルーラがこう言ったのは。

「さて、そろそろ帰ろうか。」

「えっ……」

待ってよ、ローラ兄様は?

引っ込み思案なギードは、その一言が言えずにルーラをおずおずと見上げるばかりだった。

「そうね、帰りましょう。」

母親もこう返す始末。

彼女もローラを忘れているのだろう。

ルーラに手を引かれるまま、ギードは家へ連れ帰られた。
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