第12章 切なる思い

アルテアを発った一行は、ギード神父の教会を訪れた。

情報通のギード神父なら何か旅に役立つ情報を持っているかもしれないと考えての事だった。

「いい情報、ですか…。役に立つかどうかはわかりませんけれど」

うーん、と少し考えた後ギード神父は続けた。

「アルテア族は、ミシディア族やプレシャス族を滅ぼしたでしょう?その時期が、アルテアの国王が人間とは思えぬ力を手にしたのと同じだと風の噂で…。」

「同じ時期に…?」

ククロが言った。

「はい。ミシディア族が滅ぶとほぼ同時に、アルテア王は変わられました。それからアルテア王国軍は、プレシャス族までも……。」

ギード神父は、ちょっとうつむきながら答えた。

「それは変だね。確かアルテア王は、私達が4歳くらいの頃はなんの力も持たない普通の人間だったよね?それが、1年くらいで急に変貌するなんて…。」

ローラがいぶかしんだ。

「あのっ。アルテアの王様って、凄い能力があっても人間なんですよね?」

ルカがギード神父に尋ねると、ギード神父はこくりと頷いた。

「はい。見た目とかは、変わった所はないと聞いていますが……。でも、内面はすっかり変わられてしまいました。私がアルテアで暮らしていた頃は穏やかな優しい王様でしたのに、時がたち人間離れした力を手にした途端、人が変わったように古代人の末裔であるミシディア族やプレシャス族を滅ぼしたり、侵略戦争を始めようとしたり…。」

「それっておかしくね?まるで別人みたいだな。」

ウェッジが言った。

「ぼくも同じ事思ったです。別人が、成り代わってるみたいだなって…。」

ルカもウェッジと同じ事を思っていたようだ。

「奇妙な事もあるものだな。」

ククロが言った。

「本当にね…。今後アルテアはどうなってしまうんだろう。教えてくれてありがとう、ギード。」

「いいえ、ローラ兄様。…あっ!」

ギード神父はハッと口元を手で押さえた。

「すみません、昔を思い出させたら悪いから兄様とは呼ばないようにしてたのに……!つい昔の癖で!」

「いいよ、また兄様って呼んでも。むしろギードといっしょに暮らしてた頃に戻れたようで嬉しいな。」

ローラは嬉しそうにニコニコしている。

そんなローラに、ギード神父は安堵したような表情を見せた。
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