第11章 温泉Panic!

「ククロ、こいつどうする?サンダガでも1発ぶちかましてやれよ?もしくはフレアとかさ?」

魔物を取り押さえているウェッジの形相も、ククロのそれに負けないくらい恐ろしい。

ククロは首を横に振った。

「いいや、そんななまやさしいものでは足りない。ファイガで生きたまま火葬して…」

ククロが手のひらに炎を灯した瞬間、魔物の口パクがさらに激しくなり、顔色も真っ青になる。

さすがに魔物がかわいそうになり、ルカはサイレスを解いた。

「ひいすみません!!人間のフリして街でごちそう食べたかったんです!お詫びにこの辺で取れる美味しい木の実を好きなだけ差し上げますから許して下さい!!!」

魔物は涙まで流しながら必死に命乞いしている。

それを見たローラとルカは、魔物がかわいそうに思った。

「お前バカかよ?ドアホか?服だけ着たって人間のフリできるわけねーだろ。鏡見ろアホ魔物。脳ミソあんのか?え?おい。」

ウェッジの怒りようは凄まじい。

「まあまあウェッ君、お詫びをするって言ってるんだし許してあげようよ…。」

三人と魔物の目には、ローラが聖人に見えた。

「じゃあ、いっぱい下さいです。山ほどいっぱいです。」

ルカが魔物にお願いした。

「はい、どうぞ。こちらになります…」

魔物は、震えた両手でたくさんの果物を差し出した。

「もっと御入り用でしょうか?」

「もういい。どっか行け。目障りだ。」

シッシッ、とククロはガタガタ震えている魔物を冷たくあしらう。

「は、はい、失礼致します……。」

魔物は、震えながら立ち去って行った。

「いい香りだね。」

ローラは果物から香るいい匂いに微笑んだ。

「この果物、さっきの温泉に浮かべたら良さそうですね~♪」

ルカがニコニコと提案した。

「そりゃいいな!湯冷めしちまったし、そうしようぜ!もっかい入ろう入ろう!」

「そうだな。もう1回温まろうか。」

ウェッジとククロが賛同すると、四人はもう1度温泉に戻って浸かった。

果物を浮かべると、甘い良い香りがお湯から香ってとてもいい気持ちだ。

「あ~いい香り♪気持ちい~!なあ、この果物、今日の夕食のデザートにしようぜ!」

「いいね。温泉の熱で温まって甘味も増してそうだし、名案だね。」

「食べるの楽しみです~。」

「そうだな。とにかく今は、全て忘れてくつろごうか……。」

服を盗られかけたストレスも旅の使命も全て忘れて、今はゆっくりと楽しむ四人であった。
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