第11章 温泉Panic!

「まてーっどろぼーーーーーーーー!人の物盗むのは泥棒なんだぞ!!!!」

「普段他人の物や金を盗んで『人の物はオレの物、オレの物もオレの物』とか言ってる奴が言っても、説得力が…。」

全力で走りながらククロがボソッと呟いた。

「自分が盗むのはいいが、自分が盗まれるのだけは嫌なんだ!!!ちくしょーっあの服お頭からもらった大切な服なのにー!返せオラァーーーーーーーッ!!」

「そ、そうなんだ…。」

ルカをおんぶして走りながらも、ローラはウェッジの怒りっぷりに気圧されている。

「盗賊から物を盗んだこと…後悔しやがれーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!」

ウェッジはさらに速度を上げ、他の仲間達より遥かに遠くに行った。

「ウェッジさん、足速いです。」

「さすがシーフ…。」

ルカとローラが感心した。

「観念しやがれぇ!!!」

ウェッジがもう少しで魔物に追い付きそうになった、その時だった!


「ひぃっ!リターン!!」


魔物が唱えた瞬間、四人は温泉の前の位置に戻っていた。

「あ…、あれっ?」

ウェッジは目を見開いて驚いている。

「なんで私達はここに?もしかして……。」

「リターンって唱えてたです…。きっと、時間を戻されたです。」

「「は?」」

ウェッジとククロが、イラッとしながら異口同音した。

「今度こそ、取っ捕まえてやる!!」

ククロが真っ先に走り出した。

「おうともよ!!今度は絶対に服取り返す!!」

ウェッジは、先程よりもさらに速度を上げて猛ダッシュし、あっという間に魔物に追い付き服を奪い取った。

しかし、また…


「リターン!!」


時間を戻されて、温泉の前に戻されてしまった。

もちろん、時間を戻されたので服は手元にない。

ウェッジとククロのイライラは最高潮に達した。

また全員で魔物を追いかけながら、ククロは怖い声音で口を開いた。

「ルカ…。」

「は、はいです…。」

ククロの形相と声があまりにも恐ろしくて、ルカは涙目で震えている。

「あのクソ魔物にサイレスしろ。今すぐにだ。」

ククロが怖いので、ルカはいうことをきいてすぐさま早口で詠唱し、唱えた。

「サイレス!!」

魔法は効いたようで、魔物が逃げながら必死に口パクしているが声は一切出ていない。

リターンは封じられたようだ。

「おっしゃあ!!時間さえ戻されなきゃこっちのもんだ!!」

ウェッジはあっという間に魔物に追い付いた。

「オリャア!!!!覚悟しやがれーッ!!!!!!!」

そして、魔物を取り押さえて逃げられなくした。

「手間かけさせやがって…。」

追い付いたククロは、物凄く恐ろしい形相になっている。

(トディ、ミシディア族を滅ぼされた日と同じくらい怖い顔してる…。)

心で呟きながらローラはルカを下ろし、魔物から服を剥ぎ取った。
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