第11章 温泉Panic!

「ねっ?泊まって行きなよ。せっかくアルテアに来たんだからさ~。」

何やら必死に誘うルーラ。

どうやら、四人を家に泊まりに誘いたいようだ。

「どうして貴方と同じ屋根の下で寝泊まりしなければならないのですか?」

ローラが冷たく一蹴した。

しかしルーラは、怯む事なく食い下がってきた。

「親子じゃないか?別れて生活しているとはいえ、たまにはこういうのもいいだろう?」

「ローラは望んであんたと親子になったわけではない。」

今度はククロが冷徹に言い放った。

「そーそー、どっちかと言えばククロのおっさんとのほうが親子って感じがするなー。知ってるか?ククロはローラが4歳の頃から今までいっしょにいたんだ。あんたに捨てられてひとりぼっちになったローラを拾って、19年間ずーっと守ってきたんだ。クソファザーの入り込む隙はないぜ。」

ウェッジがケラケラとルーラに大ダメージを与えた。

これにはさすがのクソファザーもといルーラも、ショックで黙った。

「それでは、そういう事で…。行こう、皆。」

ローラは踵を返してスタスタと三人とその場から立ち去った。

ガックリうなだれるルーラを残して。



それから四人は、飛空艇でアルテアの国をあとにした。

そう。ルーラのいる所からさっさと離れようという事だ。

「どうせなら泊まって金目の物全部貰ってけば良かったのに。」

ウェッジがいかにも盗賊らしい台詞をあっけらかんと吐いた。

「あの家に泊まるくらいなら野宿するほうがまだましだ。」

それに対して、ローラはムスッとこう返した。

「辛辣だなー。無理もないけど。」

「ごめんよ。君一人であの家に不法行為侵入するのは一向に構わないけれど、私はあの家の半径百メートル以内に近付きたくないんだ。」

「ローラさんにとってのおうちは、ククロさんのいる所ですもんね?」

ルカがおっとりと言うと、その言葉にローラは柔らかく微笑んだ。

「そうだよ。私にとっての家は…、帰る所はトディや皆のいる場所だ。そういえばウェッ君、最近練習してる技があるんだって?」

「ああ、うん…。ローラの魔法剣が強いから、オレも何かひとつ取り柄がないとなーと思って。名前はもう決まってるんだけど、まだ完成してないんだ。名前はルパインアタックって決めたんだけど…。」

「どんな技なんですか?」

ルカが興味津々で尋ねる。

「オレ、一応盗賊だから素早さだけはあるだろ?それを生かして、影分身して敵を惑わしながら攻撃するみたいな技にしたいんだけど…なかなかうまくきまらなくてさ~。早いとこ完成させたいんだけどなぁ。」

「完成するのを楽しみにしてるよ。」

「おうよ!!」

三人の会話を聞きながら飛空艇を操縦していたククロは、ある事に気が付いた。

「ん?…ちょっと三人とも、こっちへ来い。」

ちょいちょいと手招きされ、三人はククロのいる操縦席の近くへやって来た。

「どうしたんですか?ククロさん。」

「この近くに、天然と思われる温泉がある。休憩がてら入って行きたいんだが……。」
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