第10章 とある親子の物語

それは、あてもない旅だった。

ある日、とある町を散策していたらローラが突然こんな事を言い出した。

「トディ。僕に剣を買って。」

「剣…?なんでまたローラが。」

「僕、赤魔道士になりたいんだ。」

ローラの目は真剣だ。

「赤魔道士になって、トディを助けられるように強くなりたいんだ。」

そのローラの言葉が嬉しくて、ククロは首を縦に振った。

「わかった。武器屋に行こう。」

「やったー!ありがとうトディ!」

それからローラは、必死に剣や魔法の修行に励んだ。

戦いの中で覚えることもあれば、本などで知識を得て習得することもあった。

やがて、ローラが一人前の赤魔道士になる頃には、ローラは19歳の青年に成長していた。


「ようやく一人前の赤魔道士になれたな、ローラ。それもほとんど独学で。君ほどの努力の天才を、僕は見た事がない。」

「えへへ……。これで私も、少しはトディを助けられるようになれたかな…。」

ローラは少し照れ笑いをした。

「えっ。『私』?」

「ああ。一人称を変えてみたんだ。これからはもっとしっかりした人間にならないと、トディを支えるなんて出来ないからね。」

ローラのその気持ちが、ククロは素直に嬉しかった。

「あてにしてるぞ。」

「私もね。トディ。」

この後も、ふたりの旅は4年間続いた。

後に親子ふたりだけの旅ではなくなることを、この時はまだ知らないままーーー……。





「それから君達と出会って……以上。めでたしめでたし。」

全て話し終わると、ローラはこう締めくくった。

「けっこう波乱万丈だな…。でも、ギード神父にまた会えて良かったな。」

ウェッジはしんみりした顔でローラに言った。

「うん。まさか再会できるとは思ってなかったよ…。でも、聖職者になってるとは思ってもみなかったな。」

ローラは微かに微笑んだ。

「えっと、ローラさんを拾われたのが19年前ってことは……。その時はククロさんは、31歳ですか?」

ルカが尋ねると、ククロは黙って頷いた。

「おっさんにも、そんな若かりし頃があったんだなー。」

「黙れクソガキ。」

ウェッジの軽口にククロは怒気を孕んだ静な声で言い返した。
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