第10章 とある親子の物語
「…親が探しに来るまで、ここで僕と待つか?」
ククロはなるべく優しい声を出すよう努めた。
子どもも、「うん。」と涙を拭いながら頷いた。
待っている間、ふたりはとりとめのない他愛ない話をした。
「その年齢で共通語を話せるのは凄いな…。身なりも立派だし、貴族か?」
「うん。そうだよ。共通語とかいろいろ、ギードといっしょに習ったの。」
「そのギードというのは?」
「双子の弟。僕のがお兄ちゃんなんだよ。」
「そうか…。君の名前は?僕はククロ・ココ・ジステイラ。ミシディア族だ。」
「僕、ローラ・クルーヤ・ディーン。4歳。アルテア族なの。」
「そうか、ローラというのか…。いい名前だな。」
「えへへ」
そんな会話をしているうちに、空は暗くなる。
しかし、何時間たとうとも迎えは一向に来なかった。
「…来ないな。両親。」
「父様も母様も、僕のこといらないんだ…。」
ローラの目から、大粒の涙がにじみ出した。
このまま放っておくわけにもいかない。
ククロはいちかばちか訊いてみる事にした。
「うちに来るか?」
「えっ…。」
「うちの子にならないか?ローラ。」
ローラはしばらく考えてから、「うん。」とこくりと頷いた。
ククロに手を繋いで連れられて、ローラはミシディアの村に到着した。
そこは自然に囲まれた空気の美味しい所で、素朴な家々がちょこんとところどころに建っている。
「ただいま。」
ククロはミシディア語で言いながら、家のドアを開けた。
「遅かったわね、ククロ。その子は?」
ククロの母親らしき人物も、ミシディア語で応じた。
「アルテア族の子だ。森に捨てられてたし、両親も探しに来ないから拾ってきた。うちで育てないか?」
「まあ、かわいそうに…。もちろんよ。」
慣れない言語で会話するふたりが何を言っているのかわからなくて、ローラはきょとんとふたりを見ている。
ククロの母親は、ローラの目線に合わせてしゃがみ、共通語で話しかけた。
「はじめまして。私、ククロの母親よ。あなたは今日からうちの子よ。私のことはマディって呼んでね。」
「マディ…?」
「ミシディア語で、お母さんって意味よ。これからいっぱい、ミシディア語を教えてあげるからね。」
「うん!じゃあミシディア語でお父様は?」
「トディよ。」
「トディ!」
元気よく言いながら、ローラはククロにぎゅっと抱きついた。
「よしよし…。もう遅くなったし、寝るか?」
ククロは優しく言いながらローラの頭を撫でた。
「うん!」
ククロに連れられてベッドに入ったローラは、こんな事を聞き出した。
「トディは僕のこと置いてかない?」
両親に置き去りにされた事が、ローラの心に不安を残しているのだろう。
ククロは、ローラの柔らかな銀髪を撫でながら答えた。
「置いてかないよ。何があってもな。だから安心しておやすみ。」
ようやく寝付いたローラを見て、ククロは決心した。
必ずこの子を幸せにしてやらなければと。
ククロはなるべく優しい声を出すよう努めた。
子どもも、「うん。」と涙を拭いながら頷いた。
待っている間、ふたりはとりとめのない他愛ない話をした。
「その年齢で共通語を話せるのは凄いな…。身なりも立派だし、貴族か?」
「うん。そうだよ。共通語とかいろいろ、ギードといっしょに習ったの。」
「そのギードというのは?」
「双子の弟。僕のがお兄ちゃんなんだよ。」
「そうか…。君の名前は?僕はククロ・ココ・ジステイラ。ミシディア族だ。」
「僕、ローラ・クルーヤ・ディーン。4歳。アルテア族なの。」
「そうか、ローラというのか…。いい名前だな。」
「えへへ」
そんな会話をしているうちに、空は暗くなる。
しかし、何時間たとうとも迎えは一向に来なかった。
「…来ないな。両親。」
「父様も母様も、僕のこといらないんだ…。」
ローラの目から、大粒の涙がにじみ出した。
このまま放っておくわけにもいかない。
ククロはいちかばちか訊いてみる事にした。
「うちに来るか?」
「えっ…。」
「うちの子にならないか?ローラ。」
ローラはしばらく考えてから、「うん。」とこくりと頷いた。
ククロに手を繋いで連れられて、ローラはミシディアの村に到着した。
そこは自然に囲まれた空気の美味しい所で、素朴な家々がちょこんとところどころに建っている。
「ただいま。」
ククロはミシディア語で言いながら、家のドアを開けた。
「遅かったわね、ククロ。その子は?」
ククロの母親らしき人物も、ミシディア語で応じた。
「アルテア族の子だ。森に捨てられてたし、両親も探しに来ないから拾ってきた。うちで育てないか?」
「まあ、かわいそうに…。もちろんよ。」
慣れない言語で会話するふたりが何を言っているのかわからなくて、ローラはきょとんとふたりを見ている。
ククロの母親は、ローラの目線に合わせてしゃがみ、共通語で話しかけた。
「はじめまして。私、ククロの母親よ。あなたは今日からうちの子よ。私のことはマディって呼んでね。」
「マディ…?」
「ミシディア語で、お母さんって意味よ。これからいっぱい、ミシディア語を教えてあげるからね。」
「うん!じゃあミシディア語でお父様は?」
「トディよ。」
「トディ!」
元気よく言いながら、ローラはククロにぎゅっと抱きついた。
「よしよし…。もう遅くなったし、寝るか?」
ククロは優しく言いながらローラの頭を撫でた。
「うん!」
ククロに連れられてベッドに入ったローラは、こんな事を聞き出した。
「トディは僕のこと置いてかない?」
両親に置き去りにされた事が、ローラの心に不安を残しているのだろう。
ククロは、ローラの柔らかな銀髪を撫でながら答えた。
「置いてかないよ。何があってもな。だから安心しておやすみ。」
ようやく寝付いたローラを見て、ククロは決心した。
必ずこの子を幸せにしてやらなければと。