第10章 とある親子の物語

アルテアの国についた一行は、その後しばらくそこに滞在していた。

もしかしたら旅に役立つ情報が手に入るかもしれないということで、今日も光の戦士達は城下町を散策している。

「にしても広いな~、ローラの故郷。だいぶ都会じゃん。」

てくてく歩きながらウェッジはあたりをキョロキョロと見渡した。

道は広く、家々も多くて大きい。

おそらくコーネリアの城下町といい勝負だ。

時折、貴族の乗った馬車も走っている。

「はは……。そうかな。にしても、4歳の時以来だからなつかしいな。トディ、すまないね。トディはアルテア族を良く思ってないのに、わざわざアルテアに来てくれて。」

「別にいい……。」

ククロは素っ気なく返した。

内心は、心持ち穏やかではないのだろう。

「やっぱり、いろいろ思い出すこともあるですか?」

ルカがローラに尋ねる。

「そうだね…。ギード達と暮らしていた頃のこととか、トディに拾われた頃のこととか思い出すな。」

「お話聞きたいです。」

ルカはローラをじっと見詰めた。

「いいよ。ウェッ君がルカに過去の話をいろいろしたように、私も話そうかな。仲間だしね。」

「えっ?!ルカに話してた時、声ローラにも聞こえてたのか?!!」

ウェッジは目を丸くして驚いた。

「それはまあ、同じ飛空艇内にいたんだし。」

「ちなみに言うと、僕にも聞こえてたぞ。」

ウェッジはルカにだけ語ったつもりが、ローラやククロにも聞こえていたようだ。

ウェッジは耳まで真っ赤になった。

「オッ、オレのことはいーよ!!それよりローラも昔話するんだろ?!さっさと話せよ、聞いてやるから!」

「はいはい。」

ローラはクスクスと笑んだ。

「それじゃあ、話すね。まずは、トディとの出会いから……」




今から19年前。

ミシディアの村近くの森を、ククロは歩いていた。

すると、どこか遠くから子どもの泣き声が聞こえてきた。

(なんだ…?)

その泣き声のもとに行ってみると、そこでは身なりのいい銀髪の少年が地べたに座って泣きじゃくっていた。

おそらく他民族の子に違いないと察し、ククロはどの民族にも伝わる共通語で声をかけてみた。

「……どうした?パパとママは?」

「!」

銀髪の子どもはククロに気が付くと、涙に濡れた目でククロの顔を見上げた。

「僕、父様と母様とギードとピクニックに来たの。でもそしたらね、僕がおしっこに行ってる間に皆いなくなってた。」

子どもも泣きべそをかきながら共通語で返した。

どうやら親に置き去りにされたのだろうとククロは察した。
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