第9章 ずっと、これからも…

「まったく、こんな所にまで現れるとは……。まあここはアルテアだから仕方ないか。」

ローラは深いため息をついた。

「しつこいクソだよな。」

ククロが暴言を吐いた。


「あんた達、もしかして旅の人かい?」


すると、町人の男性が四人に声をかけてきた。

「はいです~。」

ルカがそれに応じた。

「じゃあ教えてあげるよ。このアルテア国の将軍はアルテア王国軍11将って呼ばれててさ、11人いるんだ!」

「11人も?」

ウェッジが反芻した。

「ああ。ウシュムガル様と、ムシュマッヘ様と、ムシュフシュ様と、ウガルルム様と、ウリディンム様と、ウル・ダブルチュ様と、ラハム様と、ギルタブリル様と、クサリク様と、バシュム様と、クリール様ってんだ。彼らは凄いんだぜ!全員青魔道士でさ、魔物の技さえも操れる素晴らしい方々なんだ!」

町人の話を聞いていて、ククロとルカは思った。

11人もいる将軍が、揃いも揃って全員が青魔道士だなど。

まさか……

(…僕の考えすぎか?)

(皆、人間ですよね……?)

疑心暗鬼になりすぎだろうか。

アルテア王国軍11将が、人間ではなく魔物なのではないのかなどとは。

(どうも、ひっかかるな……。)

ククロはモヤモヤした心を誰にも打ち明けず奥底にしまいこんだ。

もちろん、ルカも。





その夜。

ウェッジはなかなか寝つけず、宿屋のベランダで夜の空を見ていた。

すると、後ろが光っているのに気付き、ウェッジは何事だろうとバッと振り向いた。

そこにいたのはーーー…、

「お頭……?!」

そう。透けてはいるが、確かにお頭だった。

視界が滲んで、姿がぼやける。

『ははっ!泣いてんじゃねーよ、ウェッジ!!』

「な、泣いてねーよ…。」

そう言いながらも、ウェッジの目からは大粒の涙がボロボロと溢れて止まらない。

『お前、立派になったなあ…。あんなにチビだったのに。光の戦士だって?』

「なんでそれを…?」

『そりゃあ、見てたからだよ。ずっとな。』

お頭は歯を見せて笑った。

生前と変わらない笑顔だ。

「ずっと……?」

『おうよ!盗賊団が解散した時から、ずーっとだぜ。お前は気づかなかったけどな!』

ひとりぼっちで生きてきたと思っていた。

しかし、そんな自分をお頭は見ていた?

悪になってでも一生懸命生きる姿をずっと見ていた……?

ウェッジは、久しぶりに愛情に包まれた気持ちになった。

なんて温かいんだろう。
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