第9章 ずっと、これからも…

「でさ~…お頭が盗賊団を結成したのがさ、お頭がもともとはバラバラだった荒くれ盗賊どもを実力でひとつにまとめたって経緯らしいんだ。」

空を飛ぶ飛空艇の中から下の地上を眺めながら、ウェッジはポツポツと語る。

それをルカは隣で黙って聞いていた。

「盗賊団の生活は楽しかったぜ。皆、ガキは足手まといだなんて言いながらもわりと可愛がってくれたし……。町とかで盗みばっかりして素行のいい暮らしぶりとは言えなかったけど、幸せだったな。短い間だったけど、最高に楽しかった。」

語るウェッジの目は、今までで一番穏やかだ。

それは、ルカも内心驚いたほどに。

「…他の盗賊団との関係は、どんな感じだったんですか?」

ルカは控えめな声音で尋ねてみた。

「んー?まあまあ、可もなく不可もなくって感じかな。ケンカすることなく仲良くしてたぜ。」

「そうなんですか……どうして急に、いっぱい昔のことをお話してくれるようになったんですか?」

「ルカに1度話しただろ?オレの昔話。あの時は思い出すのがつらくて少ししか話せなかったけど、1度話したことで詳しく話す勇気が出たというか…。」

「そうでしたか…。教えてくれてありがとうです。」

「なーに、べつに?」


「おーい、お子様達。ちょっといいかい?」

ローラが、ルカとウェッジのもとにやって来て声をかけた。

「なんだよローラ?」

「なんですか?」

「あのさ、今アルテアの国の上空にいるから、私の19年ぶりの里帰りも兼ねて行ってみないかってトディが…。」

「えっ?!ククロさんは、アルテア族を憎んでいるのでしょう?自分からアルテアの国に行こうって言ったんですか?」

ルカは驚いて目を丸くした。

「そうなんだよ…。ありがたい話だね。それで二人に、今からアルテア語をレクチャーしようと思うんだけど、いいかな?トディはアルテア語をわかるけれど、二人はアルテア語がわからないだろう?」

「ええ~っ?!ローラが通訳してくれればいーじゃねーか!!」

ウェッジはイヤなのか不満げな顔をした。

「私がいちいち通訳するより、自分で会話内容を理解した方が手っ取り早いだろう?」

ローラはニッコリと言った。

「さあ、アルテア語の勉強を始めようか?まずは文法と基本的な語彙から。」

「はいです~。」

「ちぇっ。」



ローラがお子様二人にアルテア語を困らない程度教え、彼らが理解するまで五時間かかった。

ルカは1時間程度で覚えたのだが、彼よりおつむの弱いウェッジは苦戦をしいられたのだった。
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