第8章 とあるシーフの昔話

お頭は、拾ったガキを一人前の盗賊にしようと盗みの技術をそいつに教えました。

そいつもお頭のもとで盗賊として生きる決意をしました。

悪さばかりして綺麗事も言わないけれど、親より親切で優しかったお頭や盗賊団の皆。

幸せでした。

だがその幸せは、ほんの短い間でした。

「ウェッジ!!危ねえっ!!!」

足を滑らせ崖から落ちた4つのガキをかばい守り、お頭は若い命を落としたのです。

盗賊団の皆は、そのガキを責める事はしませんでした。

でも、お頭を失った盗賊団は解散という形になりました。

またひとりぼっちになった盗賊のガキは、生きていく為に金や食い物を盗みながらあてもなくフラフラと生活していました。

寒さと餓えに怯えながら、お頭のくれた思い出で心を癒していました。

今日生きれるか、明日死ぬかさえわからない日々でした。

仲間達と出会うまではーーー…。



「めでたし、めでたし。」

ウェッジはここで昔話を終わらせた。

ルカはしんみりした顔でうつむいている。

「ほらな、だから言っただろ?おもしろくねーと思うって。」

「ウェッジさんは……自分をかばってお頭さんが死んでしまったことに罪悪感を感じているのですか?」

ルカはうつむいたままポツリと質問した。

「そりゃーちょっとはね。でもさ、お頭なら言うと思うんだ。『こらウェッジ!!めそめそしてんじゃねーよ!!』ってな。」

ウェッジはかすかに微笑った。
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