第6章 戦士達の絆

「いったい、どうしたというんだ。突然具合が悪くなったりして。光の戦士の話をしてから様子が変だぞ。」

ククロは心配そうに、ベッドに腰かけているウェッジに尋ねた。

「ウェッジさん、まさか………。」

彼は、光の戦士である事が重荷なんだろうか。

ルカは心配そうにウェッジを見つめた。

ウェッジはうつろな目でうつむいたままだ。

「……。トディ、ルカ。悪いけど、ちょっと外に出ててくれないかな。あまり皆で問いつめると、話せるものも話せなくなりそうだからさ。」

ローラは申し訳なさそうに二人に頼んだ。

「……わかった。行くぞ、ルカ。」

「はいです…。」

ククロとルカが宿屋の外に出たのを確かめると、ローラはウェッジの目線に合わせてしゃがんだ。

「…わかるよ。与えられた使命の大きさ。これから待ち受けるであろう波乱の運命。それに、世界中の人々の期待。大人の私でさえ不安なのに君だってまだ13歳なんだ、重荷だよね。」

ローラが優しく言葉をかけた後、ようやくウェッジはうつろいだ目のまま口を開いた。

「…オレ、初めてなんだ。こんなにでっかい期待をかけられたの。」

「うん、うん。」

「ずっとひとりで生きてきたから、ずっと自分勝手にやって来たから………。オレみたいなのが光の戦士だなんて、信じられねえ。なんでだよ……。なんでオレなんだよ。」

「うん…。」

「でもさ、オレよりずっとちびっこのルカがさ、光の戦士な上にアルテマの封印を解くなんて重いこと任されてるのに弱音ひとつ吐かないんだぜ。あいつより兄貴分のオレが、あいつの前で弱音吐けるかよ……。」

「うん……。」

「正直言って…逃げ出したい。オレはただのひとりぼっちのコソ泥なんだ。世界の為に全てをなげうてるような清らかな存在じゃないんだ。オレはそういう身勝手な男なんだ。お前らとは違うんだ。」

だんだん次第にウェッジの目には大粒の涙が溢れてきた。


「僕は、清らかな存在なんかじゃない。」

「ぼくもです……。」


部屋のドアを開けて、ククロとルカが入ってきた。

おそらく外に出たふりをして戻って来て立ち聞きしていたのだろう。

「トディ…?!ルカ?!」

「僕は、アルテア族を憎んでいる。…ローラとギード神父以外の全てのな。清らかなはずがない。」

「ぼくは、アルテア族の人を殺したことがあるです……。」

ルカは切なそうにうつむいた。

「お前ら……。」

「…そうだね。私も清らかではない。実父を憎んでいるし、トディとルカの故郷を奪い滅ぼしたアルテア族だ。」

「ローラ……。」

初めて聞く、仲間達の切なき想い。

つらいのは、苦しいのは、重さを感じているのは自分だけじゃない?

「でも……。皆さんがいてくれるから、がんばって生きれるです。否応なしに与えられた使命に立ち向かえるです…。ですから、ウェッジさん。こわいですけど、協力してくださいです……。ぼく、がんばりますから。」

小さな2つの手が、ウェッジの右手を包み込むように握った。

その温かさに、ウェッジの心の重みは溶かされてゆく。

「ねっ。心にケアルですよ~。」

この台詞はルカなりの励ましなのだろう。

心なしかウェッジの気持ちは、とても軽くなっていた。
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