第5章 束の間のひととき

「ところで話は脱線しちゃいますけど、ぼく思い出したんです。ルーラさん、またねって言ってましたよね?また来るんでしょうか…。」

ルカがおずおずと言った。

「ルーラって誰だっけ?」

ウェッジはルーラの名前をすっかり忘れていたようだ。

「クソファザーですよ。クソファザー。まったくしつこい。便器にこびりついてなかなか落ちないクソのようだ。」

「ギード、それ聖職者のする例えじゃないよ。」

ローラは苦笑いを浮かべた。

「おや。そうですか?それはそうと、前から気になってたんですが、あなたたち4人はどうしていっしょに旅をしてるんですか?年齢も種族もバラバラですよね。」

「あーそれは……ルカが、僕達は光の戦士なんじゃないかと言ったから。」

「オレのどこが伝説の光の戦士に見えたのかさっぱりわからねーよ。」

ククロとウェッジが答えた。

「ルカーンの予言……。『この世、暗黒に染まりし時、4人の光の戦士現れん』……。あなたたちも4人ですよね。まさか、こんな小さなルカ君まで戦わせてるのではないでしょうね?」

とたんにギード神父の表情が険しくなる。

「えっ?ああ……。そもそもルカ本人が、自分は光の戦士だって言ってたから……。」

顔付きが変わったギード神父にあせりながらローラは答えた。

「ローラ。私は初めて貴方に腹が立ちました。こんな幼子に世界を救うなどという重荷を背負わせているなどとは。」

「ちっ、違うんです!神父様。ぼくは、自分の意志で戦ってるです。」

ルカはあわてて言った。

「大切な人に世界を託されたんです……。光の戦士になれって。ぼくは才能があるし、頭もいいからって。ほんとは戦いなんてイヤですけれど、ぼくには仲間がいるからがんばれます。」

「だとしたら、その人はかなり残酷ですね。」

ギード神父の声は、かなり冷たかった。

「ざ…残酷なんかじゃないです!とても、お優しい人だったです……!」

下を向きながらもルカは反論した。

そんなルカの頭をギード神父は優しく撫でた。

「貴方はその人が大好きだったんですね。貴方は強い子ですね、さすがは光の戦士です。」

微笑む彼の顔は、双子の兄のローラのそれに瓜二つだ。

それは、ルカも思わず見つめてしまうほどに。
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