Vol. 2 ヤキモチだったら嬉しい。 ・7

  • アイリ

    良かった…、

  • アイリ

    熱とか出てないね…。

  • レン

    アイリ、おまえ…、

  • アイリ

    風邪気味だったから…、心配だったんだからね…。

  • レン

    …、

  • アイリ

    夜遊びをダメだとは言わないけど、やっぱり、

  • アイリ

    体調が万全じゃないときは、できるだけ控えたほうがいいよ…?

  • レン

    おまえ、いつからここで待ってたんだ?

  • アイリ

    ……そんなの覚えてない。

  • レン

    『覚えてない』って、おまえ…、

  • レン

    手もすごく冷たいし、

  • レン

    早くベッドに入って寝ろ、な?

  • アイリ

    じゃあ……、

  • アイリ

    おんぶ。

  • レン

    えっ?

  • アイリ

    おんぶ。

  • アイリ

    小さい頃は、よくおんぶしてくれたじゃん…、

  • アイリ

    おんぶで部屋まで行く…。

  • レン

    …ったく、今も小さい子みてーだな。

  • 俺はやれやれといった風に相好を崩すと、

  • 靴を脱いで廊下に屈み、要望に応えてアイリを背負う。

  • レン

    (身体まで冷えてるじゃねーか…)

  • 今は、初夏なのに。

  • 両腕が肩から首へと回り、必然と触れるしなやかな肌は、

  • アイリの体がどれだけ冷え込んでいるのかを正確に伝えてくる。

  • レン

    おまえが風邪引くぞ。

  • アイリ

    大丈夫だよ…、

  • アイリ

    お兄ちゃんよりもまだ若いもん…。

  • レン

    なんだよそれ。

  • レン

    俺だってまだオッサンって言うには早いだろ?

  • 苦笑混じりに切り返しながら、階の部屋へと続く螺旋階段をゆっくりと登る。

  • アイリ

    風邪がひどくならなくて、ほんと安心したよ…。

  • 俺の肩に軽く顎先を乗せたアイリは、

  • 心地よい揺れに体を預けるようにして、眠気を引きずりながら声を並べた。

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