Vol. 1 初めまして…? ・2

  • 正直、男慣れしていない堅物とも言える私でさえ、

  • 否応なく目に留めてしまうほどで。

  • ユヅキ

    (俗に言う、王子様みたいな人って、いるところにはいるもんだな…)

  • ぼんやりと、そんなことが脳裏を巡った。

  • ……いや、そんなことよりも。

  • ユヅキ

    あの、どちら様ですか?

  • キザキ

    …僕?

  • ユヅキ

    はい、

  • ユヅキ

    (他に誰がいるんだ…)

  • 思わず内心で突っ込みながらも。

  • 自身の顎先を指差す謎の青年に向けて、ひとまずコクリと頷いて見せた。

  • キザキ

    城崎咲也(キザキサクヤ)です。

  • キザキ

    よろしくね。

  • ユヅキ

    ……どうも。

  • ユヅキ

    (……ん、待って?)

  • ユヅキ

    (確か、うちの玄関先からこっちに来たよね?)

  • ユヅキ

    あの…父のお客様、ですか?

  • キザキ

    …名前、

  • ユヅキ

    え?

  • キザキ

    普通、名前って、相手に名乗られたら、

  • キザキ

    自分も名乗るものじゃないの?

  • ユヅキ

    あっ、すみません、私はーー、

  • キザキ

    そういうところ、素直だよね。

  • ユヅキ

    …、

  • キザキ

    藤沢柚月ちゃん、23歳。

  • キザキ

    その若さで、大学病院のお医者さん。

  • ユヅキ

    …――!

  • いきなり霊視紛いに言い当てられて、ちょっとだけゾクリとする。

  • ユヅキ

    (え、何なのこの人——)

  • <キザキ サクヤ>という固有名詞以外は全くの謎。

  • キザキ

    ……、

  • そんな彼はそっと口角を上げた後、

  • 少し楽しげな様子で目を細めて続けた。

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