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大学のサークルも正直めんどい。
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もともと入る気もなかったから余計や。
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ルイ
『んー…いくら高野先輩の頼みでも、嫌なもんは嫌やな』
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『頼むよ、俺が立ち上げたサークルなんだよ』
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ルイ
『そんなん知らんって』
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ルイ
『別に潰れたかてええやん』
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『写真の真髄を、みんなと研究して切磋琢磨していきたいんだよ、俺はっ』
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ルイ
『どーぞ、俺以外の奴らと切磋琢磨してくれ』
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『そんなこと言わないでさあ…、頼むよ、ルイ~!』
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ルイ
『……、』
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ルイ
『…でかい図体して、そんな子犬みたいな目で見んな…』
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なんとなく俺、
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昔から泣き付かれたら弱い。
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高野先輩は、こっちに引っ越してきてからの高校時代のサッカー部の先輩で、
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たまたま同じ大学に進学してからも色々世話にもなってるし、縦の関係抜きで仲良くしてもらってるから、
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その恩義もあるっていうか、まあ、そういった自分なりの理由も見つけて、
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【写真研究部】とやらに入ったけど。
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ルイ
『…ていうか、なんで、どこをどう曲がりくねって<写真研究部>なん?』
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ルイ
『サッカーどうしたんよ?』
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俺の率直な質問に、高野先輩は途端に目をキラキラさせて、
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『芸術に目覚めたんだ!』
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…とか言い放ったから驚いた。
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どうやら、月日の流れは人を変えることもあるらしい。
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確かに、コンクールとかに出展したとかいう高野先輩の写真はなかなかすごい。
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すごいけど。
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サッカーとは別口のその才能も素直に認めるけど。
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中森くんってイケメンだし、写真撮るよりも撮られる方だよねっ!
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ルイ
そんなことないでー。
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そんなことあるよ、ルイはかっこいいから被写体向きだよな。
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ルイ
…先輩まで一緒になって何言うてんねん。
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照れなくていいって、ルイ!
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ほんとのことなんだから!
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ルイ
……、
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ルイ
(別に照れとらんっつーの、)
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ルイ
(あんたまで一緒になって言うたら、火に油注ぐみたいになるから言うとんねん)
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そうですよね、高野先輩ー!
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次の作品で、ルイくんにモデルになってもらおうかなあ。
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ルイ
(…ほらなー)
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ルイ
いや、ごめんやけど、それは堪忍して。
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サークルにはなぜか女子が多くて、贅沢かもしれんけど、たまにしんどい。
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ルックスやビジュアルを褒めてくれるのはありがたく思う。
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でも、黄色い声っていうんかな…俺、昔からそういうのちょっと苦手。
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ルイ
(もうどうでもええから風景でも撮影して、サッサと写真の研究したらどうよ?)
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ルイ
(あんたら、ここに何しに来とんねん…)
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毎度毎度、建前の笑顔の裏でこっそり毒吐く俺って、めっちゃ嫌な奴やわ。
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ルイ
……だるい。
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今日も、そんな感じのひとときをサークルで過ごして。
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ちょっと自己嫌悪な自分に内心でげんなりした後、
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電車から降りてタラタラ歩いてたら、ちっこい背中が見えてきて。
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ルイ
…おっ、
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すぐに分かった、ヒナやって。
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やっぱ秋やな、暗くなるのも早よなって。
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ヒナが前から電車通勤なのは知ってたけど、
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薄暗い夜道を一人で歩いてんのを目の当たりにしたら、これから先も一人で歩かすのが怖なった。
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ルイ
……、
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小走りに追い付いて横に並んで顔覗き込んだら、なんかニヤけて嬉しそうな顔してて。
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いきなり声掛けたからめっちゃ驚いてて、
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もうそれが、とにかく可愛すぎやった。
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