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ルイ
…ヒナ。
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ヒナ
っ、…、
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ルイ
あんまり飲みすぎたらあかんで?
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悶々と思い込んでいたところに、不意に耳元で囁かれてドキリとする。
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口に含んだジンジャーエールを吹き出しそうになるも、なんとかグッと飲み込んだ。
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ちょっぴり自分に嫌気がさしていたところに不意打ちを食らって、
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思いついた言葉をしどろもどろに並べる。
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ヒナ
だ、大丈夫だよ、
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ヒナ
ソフトドリンクなんて、トイレが近くなるだけだから…、
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ルイ
酒飲んでへんってことは、今日は車やんな?
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ヒナ
うん、そう…、
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ヒナ
だから平気。
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ルイ
そやからって、帰り遅なるやろし、気ぃ付けてな?
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ヒナ
うん、ありがと…。
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ルイ
道空いてても、車飛ばさんようにな?
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ヒナ
わ…分かってるから。
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ルイ
…ん。
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さっきのリサに対応していたときとは、打って変わったようなルイくんの真剣な眼差し。
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それはほんのわずかな間だったけれど、
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確かに誠実な、そんな光を宿した瞳だった。
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ルイ
ほな、この辺で。
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ルイ
皆さんごゆっくり〜!
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コロッと表情を変えたルイくんは、元気な声を残して踵を返す。
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ヒナ
…、
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ヒナ
(…ずるいよ、ルイくん…、)
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ヒナ
(ちょっとだけ、ドキドキしちゃったじゃん…)
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ルイくんから見れば、年上のオバサンが情けなく狼狽えただけにすぎないだろうけど。
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ヒナ
……
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見つめた先の、ホールに戻るルイくんの広い背中はいつにも増して広く、
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そして、
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いつもより、ずっと頼もしく見えた。
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vol.2 END
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