Vol. 2 小さな芽生え ・3

  • 今回の飲み会の本当の主旨なんて深く考えていなかったけど、

  • リサの様子を注視していたら、それが何なのか悟った気がした。

  • ヒナ

    (たぶん…、)

  • ヒナ

    (いや、きっと、)

  • 意図的に、私と影山さんのことをくっつけようとしている。

  • *

    ねえ、ヒナ

  • *

    影山さんと連絡先の交換しないの?

  • ヒナ

    …あんまり興味ないから別にいい。

  • *

    『興味ない』って…、

  • *

    あのね、私たちもう28だよ?

  • *

    本気で結婚とか考えていかないとヤバイって。

  • ヒナ

    ……

  • 確かにそれを言われると、言い返す言葉が限られてくる。

  • リサは彼氏がいるから、来年あたり結婚しそうだし。

  • …でも。

  • ヒナ

    仕事に生きるからいいんだもん。

  • 偽りのない気持ちを打ち明ける。

  • *

    …はぁ…、

  • *

    仕事も大事なのは分かるけど、ヒナは今彼氏もいないんだし、

  • *

    少しは考えてみたらどう?

  • ヒナ

    ……

  • *

    ヒナのご両親だって何も言わなくても、

  • *

    本当は娘の結婚のことを考えてるんじゃないの?

  • ヒナ

    …、

  • リサは、時々痛いところを突いてくる。

  • 友達になった中学の時から、人生の課題みたいなものを私に突き付けて、

  • 背けがちなそれに向き合うように仕向けてくる。

  • 例えば、受験のときも、就職活動のときも。

  • 無意識のうちに立ち止まって悩み、躊躇する私のことを分析しては、そっと背中を押してくれた。

  • だから余計に、リサの言っていることも分かる。

  • ヒナ

    (分かるんだけどな…)

  • ヒナ

    ……

  • 無理に彼氏を作りたくないし、

  • どうせなら、自然な流れで誰かと恋に落ちたい。

  • それに、今は婚活よりも仕事…っていうのも、嘘偽りない気持ち。

  • ただ、リサの意見に思い切り反発できないのも苦しいところで。

  • ヒナ

    ……分かったよ。

  • ヒナ

    一応、考えてみる。

  • *

    ほんとに?

  • *

    ちゃんと考えなよ?

  • ヒナ

    …ん。

  • チョンと頷いた私を見て、やれやれといった風に微笑むリサを上目遣いに見やってから、

  • 化粧直しもそこそこにレストルームを後にした。

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