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今回の飲み会の本当の主旨なんて深く考えていなかったけど、
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リサの様子を注視していたら、それが何なのか悟った気がした。
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ヒナ
(たぶん…、)
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ヒナ
(いや、きっと、)
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意図的に、私と影山さんのことをくっつけようとしている。
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ねえ、ヒナ。
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影山さんと連絡先の交換しないの?
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ヒナ
…あんまり興味ないから別にいい。
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『興味ない』って…、
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あのね、私たちもう28だよ?
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本気で結婚とか考えていかないとヤバイって。
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ヒナ
……
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確かにそれを言われると、言い返す言葉が限られてくる。
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リサは彼氏がいるから、来年あたり結婚しそうだし。
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…でも。
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ヒナ
仕事に生きるからいいんだもん。
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偽りのない気持ちを打ち明ける。
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…はぁ…、
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仕事も大事なのは分かるけど、ヒナは今彼氏もいないんだし、
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少しは考えてみたらどう?
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ヒナ
……
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ヒナのご両親だって何も言わなくても、
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本当は娘の結婚のことを考えてるんじゃないの?
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ヒナ
…、
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リサは、時々痛いところを突いてくる。
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友達になった中学の時から、人生の課題みたいなものを私に突き付けて、
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背けがちなそれに向き合うように仕向けてくる。
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例えば、受験のときも、就職活動のときも。
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無意識のうちに立ち止まって悩み、躊躇する私のことを分析しては、そっと背中を押してくれた。
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だから余計に、リサの言っていることも分かる。
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ヒナ
(分かるんだけどな…)
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ヒナ
……
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無理に彼氏を作りたくないし、
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どうせなら、自然な流れで誰かと恋に落ちたい。
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それに、今は婚活よりも仕事…っていうのも、嘘偽りない気持ち。
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ただ、リサの意見に思い切り反発できないのも苦しいところで。
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ヒナ
……分かったよ。
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ヒナ
一応、考えてみる。
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ほんとに?
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ちゃんと考えなよ?
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ヒナ
…ん。
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チョンと頷いた私を見て、やれやれといった風に微笑むリサを上目遣いに見やってから、
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化粧直しもそこそこにレストルームを後にした。
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