-
レン
それは…、
-
レン
おまえだ、アイリ。
-
アイリ
…っ!?
-
レン
俺は、誰よりも…、
-
レン
おまえのことが好きだ。
-
アイリ
———!!
-
レン
これからもずっと、
-
レン
俺に、おまえの全てを守らせてほしい。
-
アイリ
——お、っ、…お兄ちゃん、
-
アイリ
でも、
-
アイリ
私たちは、兄妹…、
-
驚きに満ちた面持ちと途切れた言葉尻。
-
禁断の絵面を思い浮かべたのか、アイリの言の葉は喉元で留まっている。
-
揺らめくその瞳には、冷静すぎる俺の姿が異様に映っているかもしれないが、
-
そんなアイリを尻目に、先に鞄から取り出していた一通の封筒を手渡した。
-
レン
今朝、会社の郵便物に紛れてた。
-
アイリ
手紙…?
-
動揺を隠しきれないままでそれを受け取ったアイリは目を瞬かせる。
-
レン
サクヤから俺への誕生日プレゼントだそうだ。
-
アイリ
…、
-
レン
メッセージと旅行券が入ってる。
-
アイリ
そうなんだ、これ…、
-
レン
あいつから、おまえ宛てのメッセージも書かれてる。
-
アイリ
え…、中、見てもいいの…?
-
レン
ああ。
-
レン
(…あいつなりにもう一度、)
-
レン
(俺の背中を押したんだろうな…)
-
粋な計らいをした友人は、忙しい仕事の傍らペンを手に文字をしたため、
-
<二人の門出>にエールを送ったに違いなくて。
-
レン
それを読んで、
-
レン
俺は、サクヤらしい手紙だと思ったよ。
-
アイリ
……、
-
歓喜のようでいて不安でもあるような、そんな複雑な表情を生み出しながら、
-
アイリは緊張気味に手紙に目を走らせた。
-
+++++++++++++++++++++++++++++
-
レン、誕生日おめでとう。
無事にこの日を迎えることができて、本当に良かった。 -
あの日、レンが刺されたって聞いたときは、生きた心地がしなかったよ。
-
ほんと言うとね、
あのとき、警察署に向かったあと、 -
どこをどうやって病院に辿り着いたのか、ほとんど記憶にないんだ。
-
それほど、レンの窮地が僕にとっては耐え難いものだった。
-
順調に回復して元気になってくれて、すごくホッとしたよ。
-
僕からの今年の誕生日プレゼントは、旅行券。
-
近場の国内旅行程度のものだけど、
たまにはまとまった休暇を取って、アイリちゃんと二人で行っておいで。
-
プレゼントを無駄にしないためにも、
君が示した誕生日という《特別な日》に、ちゃんと気持ちを伝えるんだよ? -
…もしも言わなかったら、
-
「夕張メロン100個」と「リンツのチョコ100個入のギフトボックス」を100個買ってもらうからね?
-
+++++++++++++++++++++++++++++
-
アイリちゃん。
-
僕は、この世の中にはいろんな愛があってもいいと思ってる派、なんだよね。
-
許せない愛は、相手を心身ともに暴力なんかで痛めつけるような歪んだ愛。
-
でも、アイリちゃんが持っているのは、とても柔らかで暖かな優しい愛。
-
だから、あの日、キミの想いを聞いた時も、
-
兄妹だろうが何だろうが、キミにとっては苦しい恋の道だったとしても、そのまま突き進んでいいと思った。
-
誰かを好きになるっていうのは奇跡で、とても素敵なことだと僕は思うから。
-
けど、おそらくキミには、僕が知り得た真実が必要だろうなって思ったから、
-
今までずっと頑張ってきたキミに、一つ、重要なことを教えるね。
-
《レンとアイリちゃんは、本当の兄妹じゃない。》
-
…それじゃ、二人で良い誕生日を。
-
城崎 咲也
-
+++++++++++++++++++++++++++++
-
→
タップで続きを読む