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ユヅキ
ぶかぶかだ…。
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ソウタ
ははは、
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ソウタ
でもなかなか似合ってて可愛いぜ、うん。
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ユヅキ
…そうかな?
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メンズサイズのそれはゆったり過ぎるほどの大きさで、ほっこりとした温もりに包まれる。
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ソウタが貸してくれた裏起毛のジップパーカーの上下に着替えた私は、
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再び座椅子の上に腰を下ろして静かに寛いでいた。
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ソウタ
……、
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ソウタ
あのさ、
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ソウタ
さっき、おまえの家に電話入れといたから…、
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濡れた髪もドライヤーで乾かし終えて、私の気持ちが落ち着いたのを見計らったかのように、
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ソウタがおもむろに口火を切った。
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ユヅキ
…え?
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ソウタ
ちょっと飲みすぎて、今日は俺のところに泊まるから、
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ソウタ
帰らなくても心配ないって。
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ユヅキ
…、
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ユヅキ
そっか、ありがとう。
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ソウタ
…なあ、ユヅキ。
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ユヅキ
…ん?
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ソウタ
今日は何かあったのか?
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ユヅキ
……別に…、
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ユヅキ
大丈夫だよ。
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ソウタ
<何もない>とは言わないんだな。
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ユヅキ
…、
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ソウタ
とても大丈夫には見えねえよ。
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ユヅキ
…、そうだよね…。
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ユヅキ
ごめんね、ソウタ、いっぱい甘えさせてもらって。
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ソウタ
それはいいって。
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ソウタ
唯一無二の幼馴染なんだからさ、
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ソウタ
好きなだけ甘えればいいよ。
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ユヅキ
…ほんとにありがとう。
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儚い笑みを広げてしまう自分は、今まで生きてきた中でもきっと希少だろう。
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ソウタはほんの一瞬だけ切なげに目を細めた後、
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ニッと白い歯を見せてから私の頭を一撫でした。
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ソウタ
とりあえず、なんか飲むか?
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ソウタ
あ、酒以外でなっ。
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ユヅキ
……じゃあ、水でいい。
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ソウタ
水?
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ソウタ
…ま、それだけ酔ってれば水が一番か…、
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ソウタ
ちょっと待ってろ。
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ユヅキ
うん。
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もう一度私の頭をぽんとやってからキッチンへ向かうソウタの背を見送り、膝を抱えて座る。
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脛の上に顎先を乗せて目先に広がるグレーのカーペットに視線を落とすと、
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ただぼんやりと一点を見つめた。
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︙
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ソウタ
そういやさ、
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ソウタ
小学校のときに、オリジナルのマグカップを作ったよな?
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ユヅキ
……そんなことしたっけ?
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ソウタ
ユヅキの家族と俺の家族とで一緒に旅行に行った先でさ、
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ユヅキ
旅行に行ったのは覚えてるけど、
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ユヅキ
マグカップ…作ったっけ?
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ソウタ
作った作った。
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ソウタ
正確には、マグカップに模様を付ける?みたいな感じでさ。
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グラスがない為に、マグカップに注いだ水を持って戻ったソウタと思い出話に花を咲かせて和やかに談笑していたが、
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——”…ピンポーン…、”
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そこに割って入るようにインターホンが鳴り響いた。
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ソウタ
誰だよ、こんな遅くに…、
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言いながら、ソウタが玄関先に出向いてしばらくすると、
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遠くの方でゴソゴソと話し合っている声が聞こえる。
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内容までは分からないが、
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その声質から判断して、インターホンを鳴らしたのは男性だと推測できた。
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それからわずか数分後、
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玄関先での応対を終えたソウタの後ろから予想外の人物が姿を見せて、思わず息を呑んだ。
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ユヅキ
…っ、キザキさん…、
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ユヅキ
どうしてここに?
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キザキ
そっちこそ。
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キザキ
こんな夜更けに男の子の家に上がり込んで、何してるの?
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見慣れない、冷ややかな視線。
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体中が射すくめられるようで、気まずくて視線を逸らした。
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ユヅキ
別に…、
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キザキ
ちゃんとした理由もないのに、こんな時間にここに来てるの?
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ユヅキ
ソウタは幼馴染だし、そんな大袈裟なものじゃないですよ。
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キザキ
ソウタだって男の子だよ?
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ユヅキ
……、
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キザキ
迷惑かけてるって思わないの?
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ユヅキ
いきなり押しかけて、悪かったなとは思ってます…、
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キザキ
どうやら、かなりお酒を飲んでるみたいだけど…、
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キザキ
酔っ払っていきなり家に押しかけて。
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キザキ
おまけに雨に濡れて、着替えまで貸してもらってるみたいじゃない?
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ユヅキ
……
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キザキ
ほんと、キミって、
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キザキ
思ってたよりもどうしようもない子だなあ…、
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キザキ
迷惑極まりないよね、こんな子って。
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キザキさんは口角を嫌な角度に歪めてせせら笑う。
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嘲弄するような視線。辟易が混ざった溜め息。
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私は切り返すことなくただ無言で俯いた。
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ソウタ
サクヤくん、ちょっと言い過ぎだって…、
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キザキ
悪いけど、
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キザキ
ソウタはしばらく黙っててくれる?
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遠慮がちながらも諫めたソウタに微笑みを差し向けながらも、
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短く言い放ったキザキさんの瞳の奥はヒヤリとしていて笑っていない。
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ソウタ
…、
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少しの躊躇いの後、
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キザキさんの背後から滑り込むようにしてこちらに近付いたソウタは、
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カーペットの床上に片膝を立てて、申し訳なげに私の顔を覗き込んだ。
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ソウタ
ごめんな、ユヅキ…、
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ソウタ
実は、さっきおまえの家に電話したとき、通話口に出たのがサクヤくんだったんだよ…、
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ソウタ
ユヅキに話したら嫌がるかなと思って、そのこと黙ってたんだけど…。
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ソウタ
サクヤくんも『分かった』って言って電話を切ったから、
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ソウタ
まさかうちに来るなんて思わなくてさ…。
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ユヅキ
……、そっか。
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ソウタ
ここの住所も、サクヤくんにはまだ教えてなかったし…、
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キザキ
僕、探偵さんだよ?
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キザキ
今ソウタが住んでる場所なんて、ちょっと調べればすぐに分かるよ。
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畳み掛けたキザキさんは、改めてこちらに向き直った。
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キザキ
…僕が勝手に来たんだから、ソウタのせいじゃない。
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キザキ
どうやらここに、ヤケ酒飲んで自滅しかけてる子がいるみたいだから、
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キザキ
面白そうだなと思って見物に来ただけ。
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ユヅキ
…!
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キザキ
酔っ払ったところで何かが変わるわけでもないのに、
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キザキ
笑っちゃうよね。
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耳を疑うような刺々しい発言に、キュッと唇を噛み締める。
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ユヅキ
(何も知らないあなたに、)
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ユヅキ
(そこまで言われる筋合いなんかないっ…)
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悔しくて、悲しくて。
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見上げた先のキザキさんを貫くように見据えながら、低い声を刻みつけた。
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ユヅキ
キザキさんに…、
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ユヅキ
私の何が分かるって言うんですか…、
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キザキ
そんなの分かるわけないじゃない。
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ユヅキ
そうやって…、ヘラヘラ笑って、
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ユヅキ
そんなに面白いですか?
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キザキ
うん、楽しいよ、
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キザキ
こうやって、バカな子のこと眺めるのって。
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ユヅキ
……酷い言い方するんですね…、
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キザキ
一人で勝手に荒れてさ。
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キザキ
自分自身を見失いそうになってる子って、ほんと無様だよね。
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ユヅキ
…っ、
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キザキ
なに?
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キザキ
文句でもある?
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キザキ
あるわけないよね、
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キザキ
本当のことを言われてるんだから。
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ユヅキ
……、っ、どれだけ…、
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ユヅキ
どれだけ苦しいかなんて、
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ユヅキ
キザキさんには分からないですよっ!
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キザキ
……
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胸が引き裂かれるみたいに、もう心が限界で。
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気付けば、人目を憚らず止めどなく涙が溢れ出していた。
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