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ユヅキ
あの…、
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ユヅキ
やっぱり、寂しいですか…?
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キザキ
なに言ってるの、そんなの愚問だよ。
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ユヅキ
…、
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キザキ
……ごめん。
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キザキ
ちゃんと分かってるんだよ?
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キザキ
ユヅキちゃんが真剣に考えて決めたことだろうって…。
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キザキ
だって僕、仕事を頑張ってるユヅキちゃんのことも大好きだから。
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ユヅキ
……キザキさん…。
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キザキ
でも、今はちょっと、いきなりで、
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キザキ
寂しすぎて…、
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キザキ
素直な気持ちで、頑張っておいでって言えない…。
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ユヅキ
……、
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こんなにも深く落ち込むキザキさんを目の当たりにするとは思ってもみなくて、
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内心で狼狽えてしまう。
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気持ちの整理云々を考えて、もっと早くに渡米することを伝えれば良かった、とか。
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いっそのこと、アメリカ行きを辞めれば良かったんじゃないだろうか、とか。
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ユヅキ
……
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でも、やっぱりそういうことではなく。
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私が今、想いを言葉にして、彼に最も告げなければならないことはただ一つ。
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ユヅキ
私…、
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キザキ
……
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ユヅキ
私も、その…、
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ユヅキ
なんていうか…、
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ユヅキ
寂しいんですよね…。
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キザキ
えっ…?
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ユヅキ
つまりはその…、
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ユヅキ
長い間、会えなくなるのは嫌だなって…、
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キザキ
それって…、
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キザキ
僕と会えなくなるのが嫌だってこと…?
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ユヅキ
もちろん、そうです。
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キザキ
え、
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キザキ
ちょっと待って、ユヅキちゃん、
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キザキ
もう少し詳しく話してくれる…?
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縋りつくようなキザキさんの声は、わずかな躍動を含みながらも少しばかり掠れていて。
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向けられた疑問符を丁寧に受け取った私は激しく打つ鼓動を抑え込むようにして、
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下方で組んでいた両手に軽く力を込める。
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ユヅキ
……繋がっていたいんです、
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ユヅキ
これからもずっと、キザキさんと…。
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キザキ
———
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ユヅキ
やっぱり、どう考えても、
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ユヅキ
このまま『さよなら』っていうのは嫌なんです…、
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キザキ
ユヅキちゃん…。
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ユヅキ
私は、キザキさんのことが———
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<…好きです…!>
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ユヅキ
…っ、
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キザキ
……
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ユヅキ
……、
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キザキ
…ユヅキちゃん?
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ユヅキ
…——
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声高らかに、一世一代ともいえる告白を遂げたつもりだったのに。
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ユヅキ
(こ、声が出ない…)
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きちんと伝えなければと思えば思うほど緊張が高まって、
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声を形にすることができずに心が縮こまる。
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正確には、たったの2文字。
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<好き>と短く告げるだけでいい。
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ユヅキ
……
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ただそれだけのことなのに、心音は爆発的に加速して、たまらずに俯いてしまった。
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ユヅキ
(な、情けない…、)
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ユヅキ
(これだから、恋愛経験不足の自分は、いざというときに思うように動けない…)
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キザキ
……
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ほんのわずかな静寂の後、
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キザキ
ユヅキちゃんにしては、
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キザキ
生まれ変わりを果たすみたいに進歩したよね。
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そんな私を包み込むようなキザキさんの声が上から降り注ぐ。
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ユヅキ
…し、しましたよねっ?
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キザキ
うん、すごい進歩だよ。
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キザキ
…なんて、
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キザキ
僕も余裕じみた調子で言ってるけど、
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キザキ
緊張してるのはキミだけじゃないよ。
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ユヅキ
…え、
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キザキ
すごくドキドキしてるから。
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言いながら静かに私の手を取ったキザキさんに誘導されて、彼の左胸に手を押しあてる。
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キザキ
…ね、すごいでしょ?
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ユヅキ
…は、はい…、
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キザキ
心臓が壊れちゃいそう。
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ユヅキ
壊れたら困ります…。
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キザキ
…ふふ、
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小さく笑ったキザキさんは、反対側の手で私の頬に触れる。
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キザキ
キミの初恋を、僕がもらってもいいの…?
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ユヅキ
も、もちろんです。
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キザキ
代わりに、僕のありったけの愛をキミにあげるけど…、
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キザキ
一生返品不可だよ?
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ユヅキ
ど、どんとこいですっ…!
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キザキ
あははっ、
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キザキ
……もう、ほんとにしてやられた。
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キザキ
なんなの、こんな不意打ち。
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ちょっぴりむくれながらも喜びに満ちたように。
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キザキ
大好きだよ、ユヅキちゃん…。
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キザキさんは柔らかに私を引き寄せると背中に手を回し、大切そうに優しく深く抱きしめた。
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