-
ユヅキ
この間、マユキが病院まで会いに来てくれて、そのときに聞いたんです、
-
ユヅキ
キザキさんが、マユキとのかかわりを絶っていたこと…。
-
キザキ
———そうなんだ…。
-
キザキ
ごめんね、ユヅキちゃん、
-
キザキ
僕はどうしても…、
-
ユヅキ
大丈夫です、怒ってるわけじゃないですから。
-
キザキ
…、
-
ユヅキ
マユキと久しぶりに話をして、
-
ユヅキ
やっぱり、いい子だなって思いました。
-
キザキ
…うん、
-
キザキ
ユヅキちゃんの友達だもん、いい子に決まってるよ。
-
ユヅキ
あの子を振ったこと、いずれ後悔するかもしれませんよ?
-
キザキ
しないよ。
-
キザキ
マユキちゃんがいい子なのは認めるけど、
-
キザキ
僕にとっての好きな子じゃないから。
-
謙虚な微笑みをその目元に湛えながらも、
-
確固たる意志を貫くような眼差しに切り替えて、キザキさんは私を見つめる。
-
ユヅキ
…、
-
その相好に思わず表情を引き締めて、
-
高鳴り始める鼓動を鎮めつつ、真っ直ぐに視軸を合わせた。
-
ユヅキ
キザキさんに、伝えたいことがあります。
-
キザキ
…僕に?
-
ユヅキ
はい。
-
ユヅキ
実は、私…、
-
ユヅキ
……、
-
キザキ
……
-
ユヅキ
次の非番の日に、仕事の都合で渡米するんです。
-
キザキ
えっ…?
-
ユヅキ
2年から3年の間、向こうの大学で研究チームの一員として職務に就くことになったので、
-
ユヅキ
しばらく、日本からいなくなります。
-
キザキ
———…
-
ユヅキ
…、
-
いきなりの告知に驚きを隠せないでいる眼前の形姿を一瞥してから、視線を下方に言葉を繋ぐ。
-
ユヅキ
当たり前ですけど…、
-
ユヅキ
キザキさんとも、今までのように気楽に会うなんてことはできなくなるわけで…。
-
キザキ
……そう、だよね…。
-
キザキ
日本にいないんだもん、偶然の再会すら皆無だよ…。
-
普段は勘の鋭い城崎さんも、きっと今回ばかりは範疇になかった出来事。
-
その表情は瞬く間に悲愴に満ちて、言葉尻もゆるゆると力をなくしていく。
-
私の医療分野に対する向上心を妨げないようにと誠実な態度を示そうとしてくれながらも、
-
見ているこっちが辛くなるほど、キザキさんの双眸は寂し気に翳りを深めた。
-
→
タップで続きを読む