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キザキ
…これ見て。
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ユヅキ
……、
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ユヅキ
———あっ、コレって…、
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キザキ
【ユヅキのパパのつくえ。パパだいすき】
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ユヅキ
…、
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キザキ
ユヅキちゃんが小さいときに書いたものでしょ?
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キザキ
覚えてる?
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ユヅキ
えっ…と、
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キザキ
記憶にないの?
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ユヅキ
全くないです…!
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キザキ
ははっ、そっか。
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キザキ
藤沢さんも、キミがこっそり書いたであろうコレに全く気付いてなかったらしくて。
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キザキ
でも、落書きを見てすごく喜んでたよ。
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ユヅキ
そうですか…、
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キザキ
この机は、誰の手に渡っても駄目。藤沢さんの元に置いておかないとね。
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ユヅキ
…でもこの落書き、かなり恥ずかしいですね、これはちょっと——
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キザキ
ダメだよ?
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キザキ
消さないから。
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ユヅキ
えっ、できれば消したいんですけどっ、
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油性ペンで書いてあるソレがそう簡単に消えるわけがないのに、
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落書きの位置までしゃがみ込んで指で軽くこすってみる。
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キザキ
ああもう、ダメだよ、
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キザキ
こんな可愛い落書き、大切に残しておかないと。
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ユヅキ
……可愛い落書きって…、
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キザキ
そう。とってもね。
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言いながら、キザキさんは私の隣で膝を曲げて屈む。
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落書きに視線を投じた端正な横顔は、
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幼い頃の私の面影を辿るように、頬が柔らかに隆起していて。
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キザキ
キミが残した落書きまでも、僕には大切に思えちゃう。
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ユヅキ
…、
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なんてことない私のこんな落書きでも、この人は大切に想ってくれる。
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それは本当に、とても些細なことなのに。
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どうでもいいことだと一蹴することができないのも、キザキさんの想いが素直に嬉しいから。
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ユヅキ
……
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熱く焦がれるような胸を静やかに整えながら、そっと声を紡いだ。
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ユヅキ
あの…、キザキさん。
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キザキ
うん? なに?
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ユヅキ
……色々と聞きました、
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ユヅキ
マユキから。
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キザキ
えっ…?
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いきなり振られた話題に、キザキさんはわずかに目を丸くする。
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静かに立ち上がった私に倣って彼も腰を上げると、かしこまった様子でこちらに向き直った。
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