Vol. 14 My All ・3

  • マユキ

    良かった、その想いを聞くことができて。

  • マユキ

    ユヅキが渡米しちゃう前にどうしても話しておきたかったのは、そのことだから。

  • ユヅキ

    マユキ…、

  • マユキ

    ユヅキが気持ちを抑え込んだままで、キザキさんと離れてしまうのだけは嫌だったの。

  • ユヅキ

    …、

  • ユヅキ

    ……実は、

  • ユヅキ

    キザキさんはまだ知らないんだよね、私が渡米すること。

  • マユキ

    えっ、そうなの!?

  • マユキ

    …ってことは、言わずに離れるつもりだったの?

  • ユヅキ

    うん…。

  • ユヅキ

    それに、まだ…、

  • ユヅキ

    自分の想いをキザキさんには伝えるかどうかは、今も少し迷ってる。

  • マユキ

    えっ!?

  • マユキ

    なんで迷うの??

  • ユヅキ

    …それは…、

  • ユヅキ

    なんとなく…、

  • マユキ

    ……

  • ユヅキ

    ……

  • マユキ

    …私のことを思ってくれるからだとしたら、余計なお世話だからね?

  • ユヅキ

    ごめん、なんていうか…、

  • マユキ

    ちゃんと気持ちを伝えなきゃダメだよっ。

  • ユヅキ

    ———

  • マユキ

    ……ね、ユヅキ

  • そのまま私の髪を撫で梳いていたマユキの手が、そっと肩を掴んだ。

  • マユキ

    ユヅキが私のことをいつも考えてくれるように、私だってユヅキのことを考えてるの。

  • ユヅキ

    …、

  • マユキ

    子どもの頃からずっと、私が一人ぼっちにならないように側にいてくれたこと…、

  • マユキ

    私、ずっと忘れたことないよ?

  • ユヅキ

    …、マユキ…、

  • マユキ

    そんな優しいユヅキだからこそ、絶対に幸せになってほしいの。

  • ユヅキ

    ……

  • マユキ

    私は、どんな物語もハッピーエンドが好きなの。

  • マユキ

    ユヅキが作るハッピーエンドだったら、もう最高!

  • 弾けるような笑顔で、マユキは私の肩を抱き寄せる。

  • ふわふわとしたその優しさは、

  • 私の心の雪解けを促すような暖かさを惜しみなく届けてくれた。

  • マユキ

    渡米することも、キザキさんへの想いも、ちゃんと彼にも伝えてね?

  • ユヅキ

    ……

  • マユキ

    ユヅキ、お願いだから。

  • ユヅキ

    …、

  • マユキの真っ直ぐな瞳の色に、強く背中を押されて。

  • それは、

  • 私が初めて紡ぐハッピーエンド。

  • ユヅキ

    ……分かった、頑張ってみる。

  • 耳奥を擽るようなマユキの言葉に指切りをするように、

  • 私はそっと頷き返した。

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