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マユキ
…でもね、
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沈黙に沈む私の隣で、
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マユキは爽快感が溢れるような眼差しをスッと上に向けた。
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マユキ
キザキさんからそう言われたとき、
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マユキ
<やっぱり>って思うところがあって。
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ユヅキ
…、
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マユキ
キザキさんは、
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マユキ
きっと、ユヅキのことが好きだよ。
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ユヅキ
…っ、
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マユキ
直接聞いたわけじゃないんだけど…、
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マユキ
最初に、ほら、ユヅキが一緒に食事に行けなくなったあの日。
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ユヅキ
…、
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マユキ
キザキさんと私と二人で行ったあのときにね、
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マユキ
キザキさん、事あるごとにユヅキの話をしたの。
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ユヅキ
……私、の…?
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マユキ
うん。
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マユキ
一緒に紅茶を飲んでてもね、『ユヅキちゃんは、紅茶よりもコーヒーが好きなんだよね』とか、
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マユキ
デザートのケーキを食べてても、『ユヅキちゃんは、甘いものが苦手なんだよね』とか、
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ユヅキ
…、
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マユキ
風邪を引いたときには、同窓会を早めに切り上げてアイスを買って帰って来てくれたんだって、
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マユキ
『ユヅキちゃんは認めたがらないけど、あれは絶対に僕だけのために買ってきてくれたんだよ』って、嬉しそうに話してて…、
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ユヅキ
……
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マユキ
もう、キザキさんってほんとにストレートなんだもん。
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マユキ
ユヅキのことが好きなんだろうなって、実はそのときに気付いちゃってたんだ。
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一息の間の後、マユキはいつもの優しい笑顔で続ける。
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マユキ
…そして、ユヅキも。
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ユヅキ
えっ?
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マユキ
ユヅキは、キザキさんのことが好きじゃないの?
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ユヅキ
———
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マユキ
好きだよね?
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マユキ
私の勘って、結構当たるんだけどな?
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ユヅキ
……、
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マユキ
きっと、ユヅキのことだから、私のために自分の気持ちを押し殺そうとしたでしょ?
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マユキ
ダメだからね、そういうのは。
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マユキ
そういうことされても、私は少しも嬉しくないんだからね?
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ユヅキ
…、
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ユヅキ
……うん…。
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自分がマユキの立場でも同じことを言うだろう。
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分かっていたのに、今まで想いを消し去ろうとしたのは、
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大好きなマユキの幸せを心から願い、
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何より、マユキの心を傷つけたくなかったから。
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けれど。
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『自分の気持ちを他所にやって、そんなのただの自己満足じゃない』
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キザキさんの言葉が、脳内でリフレインする。
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マユキ
…ユヅキ?
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ユヅキ
…、
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ほんとにそう。
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もういい加減、そこから抜け出さなければ。
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ユヅキ
……マユキの勘は、当たってるよ。
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私がどの誰よりも素敵だと思うマユキに対してだからこそ、
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彼女にだけは、ちゃんと本当の気持ちを伝えなければ。
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ユヅキ
……、
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ユヅキ
…好きなんだ、キザキさんのこと…。
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ユヅキ
いつの間にかこんな想い…、初めてで戸惑ったりもしたけど、
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ユヅキ
この気持ちは、もう誤魔化せないかな…。
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マユキ
…うん!
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マユキ
よくできましたっ!
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ユヅキ
…ッ、
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こちらに伸びたマユキの左手が、私の頭をわしゃわしゃと優しく撫でた。
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