Vol. 13 ピリオド. ・5

  • ユヅキ

    大丈夫ですか!?

  • 咄嗟に手を伸ばして、傾く体を抱き留める。

  • ユヅキ

    (…っ、やっぱり、結構な高熱、)

  • 熱で火照る肢体を支えてキザキさんを仰ぎ見ると、

  • 額に落ちた前髪から覗く瞳が遠慮がちに揺れていた。

  • キザキ

    ごめん、

  • キザキ

    意外とこんなときって、思うように動かないものだね…、

  • キザキ

    車まで、少し支えてもらってもいい?

  • ユヅキ

    もちろんです、肩に手を回してください。

  • キザキ

    …ありがと。

  • キザキ

    ユヅキちゃんは、僕の病気を何でも治す特効薬みたい…。

  • ユヅキ

    …、

  • キザキ

    …ねえ。

  • キザキ

    家に帰って僕がベッドに入ったら、ずっと手を繋いでてくれない?

  • ユヅキ

    …手を?

  • キザキ

    うん。僕が眠るまでずっと。

  • キザキ

    僕、子どもの頃からよく熱を出してね…、

  • キザキ

    そのときに、兄がいつも手を繋いでくれたから、安心して眠れたんだ。

  • ユヅキ

    …そうなんですね…、

  • ユヅキ

    分かりました、いいですよ。

  • キザキ

    今は、あのときの兄を優に超える存在が、キミ。

  • ユヅキ

    …———

  • キザキさんの深い想いを全身に感じて、内心で狼狽し押し黙る。

  • すぐさま私の推辞がその動揺を消し去ろうと、幾重にも広がる。

  • ユヅキ

    ……、

  • でも、

  • もう、ダメだ。

  • キザキ

    僕が朝まで眠らなければ、ユヅキちゃん大変だね。

  • ユヅキ

    …どうしてですか?

  • キザキ

    だって、眠るまでずっと手を繋いでなきゃいけないから。

  • ユヅキ

    ……大変じゃないですよ…、

  • キザキ

    え…?

  • ユヅキ

    ……

  • キザキ

    ユヅキちゃん?

  • ユヅキ

    …だって、

  • ユヅキ

    病人の要望をしっかりと聞いてあげたいですから。

  • そっと微笑み返した眼差しに、凛とした医師の風格を宿す。

  • けれどその裏側では、

  • <できる限りあなたと手を繋いでいたい>

  • という、切なる恋心を抱いて。

  • ユヅキ

    足元、気を付けてくださいね?

  • キザキ

    うん。

  • ユヅキ

    ……

  • ゆっくりと歩調を合わせながら、一つ、胸奥に灯る決意。

  • ———偽りの自分に、ピリオドを打つ。

  • ユヅキ

    ……

  • もう、

  • 好きが止まらない。

  • Vol. 13 END

タップで続きを読む

夢ストーリー設定

名前やアイコンを変更したい登場人物を選択してください。

主人公 夢主

アイコンを変更

チャットの発言者名

苗字

名前

あだ名

夢ストーリー設定

アイコンの変更には、フォレストページ+へのログインが必要です。

ログインする

アカウントをお持ちでない場合