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ユヅキ
大丈夫ですか!?
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咄嗟に手を伸ばして、傾く体を抱き留める。
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ユヅキ
(…っ、やっぱり、結構な高熱、)
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熱で火照る肢体を支えてキザキさんを仰ぎ見ると、
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額に落ちた前髪から覗く瞳が遠慮がちに揺れていた。
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キザキ
ごめん、
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キザキ
意外とこんなときって、思うように動かないものだね…、
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キザキ
車まで、少し支えてもらってもいい?
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ユヅキ
もちろんです、肩に手を回してください。
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キザキ
…ありがと。
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キザキ
ユヅキちゃんは、僕の病気を何でも治す特効薬みたい…。
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ユヅキ
…、
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キザキ
…ねえ。
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キザキ
家に帰って僕がベッドに入ったら、ずっと手を繋いでてくれない?
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ユヅキ
…手を?
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キザキ
うん。僕が眠るまでずっと。
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キザキ
僕、子どもの頃からよく熱を出してね…、
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キザキ
そのときに、兄がいつも手を繋いでくれたから、安心して眠れたんだ。
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ユヅキ
…そうなんですね…、
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ユヅキ
分かりました、いいですよ。
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キザキ
今は、あのときの兄を優に超える存在が、キミ。
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ユヅキ
…———
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キザキさんの深い想いを全身に感じて、内心で狼狽し押し黙る。
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すぐさま私の推辞がその動揺を消し去ろうと、幾重にも広がる。
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ユヅキ
……、
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でも、
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もう、ダメだ。
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キザキ
僕が朝まで眠らなければ、ユヅキちゃん大変だね。
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ユヅキ
…どうしてですか?
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キザキ
だって、眠るまでずっと手を繋いでなきゃいけないから。
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ユヅキ
……大変じゃないですよ…、
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キザキ
え…?
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ユヅキ
……
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キザキ
ユヅキちゃん?
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ユヅキ
…だって、
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ユヅキ
病人の要望をしっかりと聞いてあげたいですから。
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そっと微笑み返した眼差しに、凛とした医師の風格を宿す。
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けれどその裏側では、
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<できる限りあなたと手を繋いでいたい>
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という、切なる恋心を抱いて。
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ユヅキ
足元、気を付けてくださいね?
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キザキ
うん。
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ユヅキ
……
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ゆっくりと歩調を合わせながら、一つ、胸奥に灯る決意。
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———偽りの自分に、ピリオドを打つ。
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ユヅキ
……
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もう、
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好きが止まらない。
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Vol. 13 END
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