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イシバ
《アメリカに戻る前に少し時間が出来たから、》
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イシバ
《久しぶりに会って話でもしないか?》
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一時帰国をしていたキョウヤから、突然L〇NEが入った。
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いつもいきなりの連絡で、都合が合わないときは断らざるを得ないが、
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今回は私もちょうど非番の日だったこともありもちろん快諾した。
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以前、仕事の合間にうちに来たとき以来だから、キョウヤに会うのは何ヶ月ぶりだろう。
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あのときも、せっかく久しぶりに会えたというのに、キョウヤは仕事のスケジュールの変更を余儀なくされて、
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結局、ゆっくりすることができずに早々に帰ってしまったのだ。
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イシバ
《帰国してすぐに連絡を入れようとしたが、なかなか時間が取れずにいた》
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私の返信後すぐにポップアップされた内容に、その忙しさを想像して少し心配になる。
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ユヅキ
ちゃんとご飯食べたり睡眠取ったりしてるのかな…、
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今までにも、何度か無意識に零れた独り言。
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再会した暁には、友としてある程度の注意喚起も必要だろう。
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ユヅキ
『今回は、そっちに行くから』…と。
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多忙なキョウヤの為にも、できる限り負担を掛けない場所で。
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そう考えた私は、
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キョウヤがアメリカに戻る便が離着陸する空港のカフェでの待ち合わせを提案した。
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空港の一角にあるナチュラルテイストのカフェは思っていたよりも客数が少なく、
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オリーブの木が映える窓辺の明るい席に座った私たちは、和やかな時間を過ごしていた。
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先にキョウヤの近況を聞き
穿 り、
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順調な仕事ぶりや落ち度のない体調管理、平穏なプライベートの様子に安堵していると、
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イシバ
俺のことはもういいだろう。
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イシバ
おまえはどうなんだ?
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キョウヤは痺れを切らしたように、いつもの低音を静かに並べ立てた。
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ユヅキ
私?
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ユヅキ
私は見ての通り元気にしてるよ。
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ユヅキ
…あ、そうだ、
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ユヅキ
キザキさんの事務所がそろそろ完成するみたいでね、
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イシバ
…、
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ユヅキ
想像してた以上に、とてもいい感じに仕上がってきてるみたいだよ。
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イシバ
……そうか。
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ユヅキ
事務所に必要な備品を買い揃えたり…、
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ユヅキ
仕事と並行して引っ越しの準備も進めてるみたい。
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イシバ
……
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ユヅキ
そんな感じで、キザキさんも、忙しいながらも元気みたいだから、
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ユヅキ
しばらく一緒に暮らしてた者としては安心だよ。
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奮闘するキザキさんの姿を想像すれば、自ずと頬が緩んで笑みが広がる。
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でもまたすぐに、別の感情が支配して切なくなるから、
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その微笑をすぐに引っ込めた。
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イシバ
…ユヅキ。
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ユヅキ
ん? なに?
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イシバ
キザキのことはもういい。
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イシバ
そもそもあいつのことは、最初から頭の片隅にもない。
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ユヅキ
……あ、ごめん、
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ユヅキ
キョウヤもキザキさんと知り合いだったから、つい…。
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イシバ
……
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短く嘆息したキョウヤは、少しばかり探るように私を見据える。
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イシバ
俺が聞きたいのは、おまえのことだ。
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イシバ
仕事でのトラブルや辛いことはないのか?
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ユヅキ
…んー…、
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ユヅキ
仕事は今のところわりと順調かな。
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ユヅキ
最近は、教授たちと衝突することもあまりないしね。
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イシバ
…それならいいが。
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ユヅキ
あ、でも…、
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ユヅキ
仕事のことと言えば、今までと少し変わることが一つあるかな。
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イシバ
…変わること?
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ユヅキ
実はね、アメリカの大学から呼ばれて、
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ユヅキ
しばらくの間、
アメリカ に行こうと思ってるんだよね。 -
ホットコーヒーに一旦口を付けてから、
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いろんな経験を積んでおきたいし…と、言葉を繋いだ。
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