キザキさんはわずかに口角を引き上げると、自虐的に微笑んだ。

勘の鋭いこの人は、もうとっくに私の気持ちに気付いているのだろう。

芽ぐむ想いを追いやって身を引くなんて、きっとただの自己満足だし、

マユキにとっても余計なお世話だということも心得ている。

でも、今の私には、それしか選択肢が浮かばないから。

ファーコートのポケットに入ったままの車のキーを手で探りながら、

これ以上はキザキさんと言葉を交わすことなく、その場を後にした。

︙

急な仕事だなんてでっち上げ。

なんの用事もない病院を目指すわけがなく。

せっかくの休日に、あてのないドライブの地図を脳内で薄く描きながら、

少しの間、愛車の前ぼんやりとで立ち尽くしていた。

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